政治生命をかけた大阪都構想
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。「5月の住民投票で大阪都構想は否決され、その後、二重行政の解消に向けて府議会内に大阪戦略調整会議が設置されたものの、実態は、自民側が平気で欠席するなど、看板だけ。ところが、大阪維新の会の市議や府議は、都構想実現のために議員になっています。(彼らが政治活動を進めるためにも)都構想という看板は必要。そこで橋下氏は、彼らのために一肌脱ぐ覚悟を決めたんですよ」
また、政治理念である都構想が忘れ去られること自体、橋下氏自身の政治生命にも関わる一大事だ。「来年夏に予定される参院選挙もしくは衆参ダブル選挙に“国会議員として大阪都構想を実現する”という公約を掲げ、橋下氏が出馬する可能性は大。彼の政界引退発言をまともに受け止めている人は、この大阪には一人もいませんよ」(前出の府議会関係者)
そうなると、今回の選挙で橋下陣営としては「改めて都構想を争点とする戦略を取らざるをえない」として、前出の鈴木氏がこう続ける。「橋下氏はご存じの通りの名うてのケンカ上手。敵との違いを明確にし、世論を引きつける手法です。しかも、自ら出馬していれば、冷静に言葉を選ばないといけませんが、今回は援護射撃ですからね。本人としても言いたい放題言ってやろうという気持ちがあるんでしょうね。(選挙戦を見ていると)伸び伸びとケンカを吹っかけているように見えますね(笑)」
なにしろ、ネットでは『橋下徹に学ぶ喧嘩術』というページが生まれ、『橋下語録』(産経新聞大阪社会部)という本が出版されるほど。特に橋下氏が許せなかったのはやはり、大阪W選を目前にして、再び自民、共産両党がタッグを組んだことのようだ。「大阪市の中央公会堂で開かれた共産党系の集会『さよなら維新政治10・29府民大集合』に、自民党の柳本卓治参院議員が飛び入りであいさつしたんです」(全国紙政治部記者)
それだけではない。自民党推薦の市長候補で甥の柳本顕前市議と、知事選候補の栗原貴子府議(自民党推薦)の名を挙げ、「党派を超えてオール市民で、オール府民で、このダブル選をともに頑張ることを誓う」と宣言したというのだ。「その演説の後、柳本参院議員が壇上で共産党の山下芳生書記局長と、がっちり握手をしたんです」(前同)
だからこそ橋下氏も、両党への攻撃は容赦がない。記事冒頭の発言に続いて、街頭演説では、橋下氏が掲げた二重行政解消策を巨大なボードに掲げ、その1つ1つの政策を指示棒でバンバン叩きながら、「自民、共産に議論もなくバツにされた」と噛みつくや、やがて批判の矛先は民主党にも向けられた。

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