その背景には、西洋諸国の軍事介入により、シリアやイラクなど“本拠地の支配権”が脅かされて追いつめられた状態になっているのと同時に、“テロネットワークの成熟”があるという。「ISが雇う大量の外国人戦闘員が、自国とIS支配圏を行き来することで、ネットワークの広がりと強さが増しただけでなく、その過程で人と物の国家間移動のノウハウを得たことも大きい」(前同)

 つまり、距離や言語、文化にかかわらず、世界中どこが標的になってもおかしくないのだ。そして、日本もその対象だという。「ISの機関誌『ダビク』で、テロの対象とする『十字軍国家』が、いくつかやり玉に挙げられていますが、その一つに日本も入っているんです。なので、直接の軍事介入がなかったとしても、欧米軍隊への支援がISの目につけば、当然、その標的になります。さらに、安保関連法による自衛隊の海外活動が強まれば、危険性はより強まるといっていいでしょう」(同)

 ISに拘束されたジャーナリストの後藤健二さんら日本人2人が今年、殺害されたのは、「安倍晋三首相が1月に訪問先のエジプトでした“ISへの撲滅対策費を出す”という発言が引き金とみられている」(外交関係者)だけに、今後の外交や国際発言がテロを呼び込みかねない。「安倍首相は今回のテロを受け、繰り返しISを批判しています。国際社会の一員として発言は当然なんですが、一方で、“過去の失敗”をどの程度踏まえているのかは疑問」(前同)

 さらに現地では、気になる噂が流れているという。「今回のテロは、キリスト教にとって不吉とされる“13日の金曜日”に発生しました。そして今後も、この日が、ISのテロの目標になりうるわけです。直近で、“13日の金曜日”が現れるのは来年5月。世界の首脳が集まる伊勢志摩サミットや、それに伴う国際会議の直前の時期。今回のパリのテロでISは、オランド大統領も狙ったわけですから、相当な警戒が必要です」(前出の記者)

 国際問題評論家の小関哲也氏が、「ISは西側先進国の中でセキュリティが脆弱な国を狙っている」「イスラム教徒以外を人間として認めない」と指摘するように、日本はまさに格好の標的となりうるだろう。決して我が国も無縁ではない、今回の同時多発テロ。その危機意識は、今の安倍政権にあるのだろうか。

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