チャクリキ代表 甘井もとゆきのファイティングスポーツはサイコー!
第6回「不滅のチャレンジスピリッツ、天田ヒロミ」

 これまでにも書いてきたように、ピーター・アーツやジェロム・レ・バンナなどのチャクリキの偉大な選手たちからはその付き合いの中で大切な事を気付かせてくれます。現在、チャクリキ・ジャパンでマネージメントをさせて貰っている“K-1の特攻隊長”天田ヒロミ選手もそんな選手たちの一人です。天田選手からは“チャレンジスピリッツ”の大切さを教えて貰った気がします。

 昔のチャクリキ・ジャパンにとって、天田ヒロミ選手は大きな壁でした。ノブ ハヤシ選手のK-1初参戦、JAPAN GP決勝での武蔵選手への敗北はキャリア的にしょうがないとしても、K-1 JAPAN GPへ5度目の出場となった2004年の静岡大会は、コンディションも過去最高、キャリア的にも不足無く、チャクリキチーム一丸となってJAPAN GPの初制覇を目指しました。

 決勝の相手はこれまたGP初制覇を目指す天田選手。この頃は誰もが天田選手と戦う際の戦法として「距離を取って、ローキックで勝負する」というのが定石でした。当然ながらセコンド陣もそうした指示をノブに出しました。しかし、ノブ選手は天田選手とパンチの打ち合いでの勝負を挑み、判定負けを喫し、天田ヒロミ選手がK-1 JAPAN GP初制覇を果たしました。

 試合後、どうして天田選手の得意なパンチの打合いでの勝負を挑んだのかノブ選手に聞くと、「せっかく決勝で天田さんと当たれたのに、パンチで勝負しないと意味ないでしょう? というか勿体無いです。少なくとも僕は天田さんとパンチで勝負したかった。負けても納得しています」と、こんなところでまで“ハートの男前ぶり”を発揮していました(苦笑)。

 余談ですが、以後、ノブ選手は海外でのK-1予選GPが主戦場となり、この大会が最後のK-1 JAPAN GP参戦でした。そう考えると納得出来る試合が出来た事の方が、気持ちに反して勝利を拾う行為をするより、今となっては良かった気がします。決勝の相手が天田ヒロミ選手だったのもある意味で運命ですね。

 まあ、ハートが男前のノブ選手だけでなく、天田ヒロミ選手は対戦相手をそんな気分にさせてしまうんですね。“男気”の塊とでも申しましょうか、兎に角、その男らしい試合に惹かれる選手が多いのなんの。「自分は引退するまでに一度、天田選手と戦いたい!」と熱望する選手が私の知るだけで数名おります。試合会場でも男性人気はダントツです。そして試合となれば日本一に輝いたボクシングテクニックをベースにパンチの打合いを挑み、多くの選手を豪腕で捩じ伏せてきました。天田選手と真っ向から打ち合って勝ったのは、世界広しと言えども、ジェロム・レ・バンナとマーク・ハントの二人だけだと思います。

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