「政務秘書官の今井尚哉氏です。彼は通産省(現・経産省)出身の官僚。今井敬元経団連会長と今井善衛元通産事務次官の2人を叔父に持つ、東大法学部出身のエリート官僚です。通産省時代から、“剛腕中の剛腕”といわれていた切れ者です」(官邸詰め記者)

 今井氏は第1次安倍政権で事務秘書官として官邸に派遣され、安倍首相と意気投合したといわれる。いったん安倍首相は健康問題から政権を投げ出すが、民主党政権崩壊後に再登板するや、首相は今井氏を政策秘書官に抜擢した。「安倍首相は第1次政権時代から、今井氏の力量を高く買っていました。また、今井氏も安倍氏に再登板のチャンスがあると見て、失脚後も彼の下に足しげく通って情報を提供し、食事を共にし、信頼を勝ち取っていったんです」(前同)

 その結果、今や今井氏は安倍政権の“影の大番頭”と呼ばれているという。だが、その辣腕大番頭は、みんなから好かれているというわけではないようだ。ある自民党関係者が、こう不満をブチまける。「自民党議員が首相に面会を申し込んでも、今井氏の段階でシャットアウト。理由は“首相は忙しい”という、ただのひと言。今では、官邸との連絡に行き違いがあれば、“今井氏がすべて決めてやっているんでしょ”と言われるほど評判はよくない」

 今井秘書官への不満は、記者たちの間でも充満しているという。「番記者たちにオフレコでネタを流して手なずけ、反安倍の記者は完全に無視する。そうやって情報をコントロールしているんです。その一方、自分の知らない話が新聞などに載ると、“俺は聞いてなかった!”と激怒するらしいですよ」(夕刊紙記者)

 それだけではない。今や、首相のスポークスマン気取りなのだとか。「彼はマスコミに“首相はこう考えるだろう”と、まるで首相の代弁者であるかのような発言をしています。記者たちも内心、“また始まったよ”と思いつつ、彼の心証が悪くなると出入り禁止にされかねないから、みんな黙っているんです」(前出の自民党関係者)

 首相のスポークスマンといえば、官房長官の仕事。それが“裏の大番頭”に奪われかけているというのだ。ところで、アベノミクスを進めるために経産省寄りの政策を続けている安倍政権は、一部では“経産省内閣”とも揶揄されている。「特に安倍首相が原発再稼働に積極的なのは、今井秘書官の影響といわれています」(前出の政治部記者)

 たとえば、東京五輪招致のために、安倍首相が2013年9月のブエノスアイレスで行われたIOC総会で演説した内容も、今井氏が関与しているのではという話もあるというのだ。その際、安倍首相は、東京電力・福島第1原発事故の放射性物質汚染水漏れについて、「確実に言えます。状況はコントロールされている」と発言。「普通なら、“日本の持てる技術を結集して、全力でコントロールにあたる”という程度の話。汚染水は当時も今も海へとダダ漏れなわけだから、完全にコントロールというのは噓だったことになる。それも、原発をなんとか再稼働させたい今井秘書官が個別に安倍首相にレクチャーした結果だといわれてるのです」(自民党関係者)

 こうして経産省の利権を前面に押し立てる反面、「通産省出身ということにコンプレックスを感じていると、もっぱら。特に“一流官庁”である外務省や財務省へのライバル心は人一倍。安倍首相に面談を申しれた外務省幹部を門前払いにしたという噂まであります」(前出の夕刊紙記者)

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