西口文也「9回を打者27人連続で凡退させるも、完全試合達成はならず」【プロ野球・レジェンド選手の感動プレー】の画像
西口文也「9回を打者27人連続で凡退させるも、完全試合達成はならず」【プロ野球・レジェンド選手の感動プレー】の画像

 多くのファンに愛された名プレイヤーが惜しまれつつグラウンドから去った。そんな彼らが現役時代に魅せた“感動的なプレー”を誌上再現!――21年の現役生活で、最多勝2回、最多奪三振2回、最高勝率1回、MVP1回など輝かしい成績を収めた西武のエース・西口文也(43=投手・1995年〜西武)。彼は、三度にわたってノーヒットノーラン、あるいは完全試合達成を、あと一歩のところで逃すという珍しい記録を持っている。

 一度目は、02年8月26日の対ロッテ戦。9回二死までノーヒットノーランを続けながら、小坂誠に中前打されて大記録を逃した。二度目は05年5月13日の対巨人戦。これまた9回二死までノーヒットノーランを続けながら、清水隆行に本塁打を打たれ、涙を飲んだ(試合は西武の勝利)。だが、最も惜しかったのは、約3カ月後の8月27日、インボイスSEIBUドームでの対楽天戦だろう。

 このとき、西口は、9回終了まで、楽天打線を完全に抑え、連続で27のアウトを取った。通常なら、この時点で完全試合達成のはずだが、対する楽天・一場靖弘投手の投球もまた冴え渡っていた。一場の178球の気迫溢れる力投に西武打線が沈黙、スコアは0-0のまま、延長戦に突入した。延長10回表、緊張の糸が切れたのか、西口は沖原佳典にヒットを打たれ、大記録の達成は幻となった。しかし西口は、ここで集中力を切らさず、後続をピシャリと抑え、味方の反撃を待った。その裏、石井義人のタイムリーが飛び出し、チームが勝利したため、結果的に西口は10回1安打1四球、1-0で完封勝ちを収めた。

 延長で無安打無失点記録を逃したのは史上9人目。完全試合に限定すれば、史上初の出来事だった。9月23日の引退会見で西口は、西武一筋のプロ生活でやり残したことを問われると、「思い出すのはノーヒットノーラン。いま思えば、やっとけばよかった」と正直な心情を吐露した。しかし西口は、実際に達成する以上の感動を見る者に与えたのではないだろうか――。

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