実は、この官邸サイドが進める極秘シナリオは、昨年の6月から密かに進行していたという。昨年5月、「大阪都構想」の是非を問う住民投票が大阪で行われ、1万741票差で反対が多数となった。その後、橋下氏は「政治家は僕の人生から終了です」と、政界からの引退を表明。「住民投票の直後、橋下さんが政界から引退しようとしていたのは事実です。ところが、翌月の6月14日、橋下さんと松井大阪府知事が上京し、安倍首相、菅官房長官の両名と都内のホテルで3時間にわたって会談するのです。その頃ですよ、状況が一変したのは」(おおさか維新の会関係者)

 この会談の内容は公にされていないが、関係者によると、安倍首相は橋下氏に「国政に出たらいかがです」と出馬要請したという。つまり、大阪都構想の失敗で意気消沈して政界引退まで表明した橋下氏に、安倍首相が“国政進出”の話を持ちかけて奮起させたわけだ。その後、維新の党の分裂劇が起きる。

「分裂劇では大阪系と東京系に分かれ、大阪系は、おおさか維新の会として再発足。東京系は、民主党と衆参両院で統一会派を結成することで落着しました。安倍首相にとってみれば、この分裂劇で維新の党の不純物が取り除かれ、改憲という思想を同じくする橋下氏のおおさか維新の会と連携しやすくなったことになります」(前出の政治部記者) 維新の党の分裂で“安倍シンパ”となる新党の結成。「すべては、安倍首相と菅官房長官のシナリオ通りに話が進んでいることになります」(自民党中堅議員)

 一方、おおさか維新の会に所属する現職の国会議員は衆参あわせて11名(いずれも大阪選出)。7月のダブル選で、地域レベルの小さな政党から脱皮するには、安倍首相のバックアップは必要不可欠だ。「橋下氏の人気と知名度だけで勢力を拡大するのは限界があります。安倍政権に命運を委ねることになるのでしょう。もちろんダブル選となれば、橋下氏も衆院選に出馬するでしょうね」(前出の自民党関係者)

 そのため、橋下氏は6月の会談後にツイッターを再開。民主党批判に加えて、安倍政権を称賛する“つぶやき”を洩らし始める。その象徴が消費増税の軽減税率に絡んでのもの。昨年暮れ、政府与党が消費増税時に導入する軽減税率の対象を食料品全般としたことについて、<安倍政権・官邸、恐るべしの政治。これが政治か>と、橋下氏は安倍首相のやり口を大絶賛している。そんな中、実現した2回目の「安倍・橋下」会談。そこで何が話し合われたのか。前出の鈴木氏は、「菅官房長官が定例会見で“(橋下氏は)憲法改正について熱心に話を聞いていた”と発言しています」として、こう続ける。「自民が衆参で圧勝し、おおさか維新という新たな補完勢力が出てくれば、もはや、平和主義の公明党に臆することなく、安倍首相は改憲に着手できます」

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