第一次長嶋政権との奇妙な共通点…巨人・高橋由伸監督、高すぎる「最下位の可能性」の画像
第一次長嶋政権との奇妙な共通点…巨人・高橋由伸監督、高すぎる「最下位の可能性」の画像

「お前に不滅の巨人を託した」ミスターから直筆激励入りのボールを贈られた新指揮官に囁かれる不穏なジンクス――。

「高橋由伸新監督の置かれた状況は第1次長嶋茂雄政権発足時にそっくり。ジンクスってわけじゃないけど、ミスターみたいになるんじゃないかと心配だよ」 ベテランのスポーツライターが眉間にしわを寄せながら、ため息をつく。

 10月26日の就任記者会見で「(長嶋茂雄終身名誉監督の)強い言葉が僕の背中を押してくれた」と心境を明かした由伸監督。ファンミーティングのセレモニーではメークドラマで有名になった長嶋フレーズ「勝つ勝つ勝つ」と書かれたボールが贈られるなど、球団を挙げて長嶋直系をアピールしているように見える。確かに、2人の間には少なからぬ共通点や因縁がある。奇しくも長嶋第1次政権がスタートした1975年に生まれた由伸監督。六大学ナンバーワンスラッガーのプロ入りで、当初は別球団(長嶋氏は南海、由伸監督はヤクルト)への入団が有力視されながら、土壇場で巨人に逆転入団という経緯もうり二つ。

「それだけではありません。現役引退即監督就任という流れやチームを任された状況もほぼ同じ。長嶋監督はV9の川上哲治監督がV10を果たせず、2位に終わった翌年に就任。由伸監督は、通算12年の間にリーグ優勝7回、日本一3回の原辰徳監督がリーグ3連覇の後、2位になった翌年と監督就任のタイミングもピタリと一致しています」(スポーツ紙デスク)

 就任年齢も長嶋氏39歳、由伸監督40歳とほぼ同じ。となると、どうしても気になってしまうのが、長嶋巨人の初年度の成績。「クリーンベースボール」を掲げ、華々しく船出した長嶋巨人だが、75年シーズンの開幕6試合目で最下位転落、浮上のきっかけがつかめないまま、球団史上初の最下位に終わった。最下位は巨人にとって後にも先にも、この1回のみ。同時に「全球団に対する負け越し」「球団史上新記録となる11連敗」という不名誉な記録も作っている。まさに、巨人にとっては悪夢のシーズンだった。

 こうなる予兆は、前年の川上監督最終年に見られた。74年、優勝した中日より多い71勝を挙げ2位に食い込んだとはいえ、V9の全盛期に比べれば明らかに巨人の戦力は落ちていたのだ。王貞治一塁手が三冠王を獲得するなど、ひとり気を吐いたが、巨人のチーム打率はリーグ4位。規定打席に達したのがわずか4人という事実を見れば、いかに打線のやりくりに苦労していたかが分かる。「V9が始まった65年、巨人軍レギュラー選手の平均年齢は27.5歳でしたが、74年は32.4歳。明らかに高齢化という病がチームを蝕んでいたのです」(前出のスポーツ紙デスク)

 加えて、長嶋氏の監督就任によって、選手・長嶋茂雄三塁手がいなくなったことは大きい。戦力低下は火を見るより明らかだった。現在の由伸政権を取り巻く状況は、当時の長嶋政権以上の厳しさだ。1年目の長嶋巨人と同じように、由伸巨人が最下位に沈む可能性は低くはない。「昨シーズン、巨人のチーム打率は.243でリーグ最下位。原監督の“やりくり”で、なんとか2位にこぎつけたものの、目先の勝利最優先で、次代を担う選手が育っていません」(前同)

 そんな状況下、昨年代打で.395という驚異の打率をマーク、絶対の切り札として活躍した“高橋由伸野手”が引退してしまったのだ。「長嶋の穴がなかなか埋まらなかったように、由伸の穴も埋めるのは難しい。村田修一の衰えもあり、球団は必死で4番を打てる三塁手を探していますが、うまくはいっていない」(同)

 今や、マネーゲームをやれば必ず巨人が勝つという状況ではない。FAはもちろん、外国人選手にしても、なかなか、これといった人材を獲れないのが現状だ。結局、前ヤンキースのギャレット・ジョーンズを獲得したが、実力は未知数。「左利きですので、一塁かレフトを守ることになると思います。ロッテから獲得したクルーズはサードも守れますが、外国人枠の問題で、2軍暮らしかもしれません。結局、サードは村田で、奮起を促すライバル作りはなりませんでした」(スポーツ紙記者)

 ジョーンズは12年シーズンにはメジャーで27本塁打と、パワーはありそうだ。「ただ、外国人選手の場合、日本の野球に合うかどうか、やってみなければ分かりません。しかも、昨年8月にヤンキースを自由契約になっていて、57試合で打率.216と往時の勢いはない。過大評価は禁物です」(スポーツ紙デスク) となると、現有勢力で打線を立て直すのは焦眉の急。「由伸監督は坂本勇人、長野久義の“復活”に期待してます。15年シーズンの坂本、長野の成績は今ひとつ。坂本は打率.269、長野は.251。彼らの力なら、もう少し打てるというのが由伸監督の考えです」(前出のスポーツ紙記者)

 しかし、巨人軍フロントは、この坂本に3000万円アップという大甘更改をしてしまった。「この程度でいいんだ」と坂本が考えてしまう危険性はある。

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