がんの治療法は、基本的に外科療法(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤)の3本柱で行われるが、これらが近年、大きな進歩を遂げているという。「一番確実に患部を取り除くことができて再発率も少ないのは外科手術ですが、難易度が高いことや、患者への負担が大きいというデメリットもありました。しかし、アメリカで開発された医療機器『ダヴィンチ』を使った“ロボット手術”が行われるようになり、格段にリスクが小さくなったのです」(医学専門誌記者)

 ロボット手術とは、皮膚に小さな穴を開け、そこに手術器具を取りつけたロボットアームと内視鏡を挿入して遠隔操作で行う手術だ。切開をするわけではないので出血も少なく、患者への負担は少ない。また、拡大した立体画像を見て操作できるため、複雑な部位の切除も簡単になったという。まさに優れものだ。

 体にメスを入れずに、がん細胞を“爆死”させる放射線治療も進化を遂げている。それが「重粒子線治療」だ。「エックス線やガンマ線などの、人体を透過する放射線を照射することで、がん細胞を被曝(ひばく)させる放射線治療ですが、患部に辿り着く手前の正常細胞を破壊してしまい、副作用が出るのがネックでした。しかし、放射線治療の一種である重粒子線治療は、線量のピークを病巣の深さに合わせて照射できる炭素イオンという重粒子線を用いるため、正常細胞の破壊を抑えることができ、副作用が少ないんです」(前同) まさに、“切らない外科手術”とも言えよう。

 現在、重粒子線治療は先進医療のため、莫大な費用がかかるが、今年4月から、骨軟部への重粒子線治療が保険適用されることになった。副作用といえば、抗がん剤による化学療法は、肉体的にも精神的にも辛い治療として知れ渡っている。「抗がん剤に副作用があるのは、抗がん剤が細胞の増殖を防ぐ薬だからです。つまり、がん細胞だけでなく、増殖する細胞すべてに効いてしまうのです。たとえば、髪の毛が抜けるという副作用が顕著なのは、毛髪を作る毛母細胞が、他の細胞よりも活発に増殖するためです」(前出の牧氏)

 だが、この抗がん剤治療も日進月歩だ。近年は新しいアプローチの新薬も登場しているという。2年前から医療現場で使われている『ニボルマブ』という抗がん剤が、その一つだ。「これは、がん細胞の増殖を抑えるのではなく、がん細胞がナチュラルキラー細胞への耐性をつける能力を壊すための薬です。だから、副作用も少ないといわれています」(前同)

 また最近では、抗がん剤の副作用を抑えるために、“意外なもの”が採用されているという。「抗がん剤は活性酸素を発生させることで、がん細胞を攻撃しますが、その過剰な作用を抑制するために、抗酸化物質であるビタミンCがバランスよく併用されているのです」 こう語るのは、『ビタミンCは人類を救う‼』などの著書がある科学ジャーナリストの川口友万氏だ。川口氏は、このビタミンCには、さらなる期待がかかっているとして、こう続ける。

「がん細胞は、糖を栄養にして増殖しますが、ビタミンCは糖と構造がよく似ているため、がん細胞に吸収されやすいんです。そして、ビタミンCは高濃度なものになると、活性酸素の一種である過酸化水素を発生し、がん細胞を死滅させる効果があるといわれているのです。さらに、正常な細胞は過酸化水素を分解する酵素を持っているため、副作用もほとんどないという、オマケつきです」 この効果は、まだ動物実験の段階だそうだが、近い将来、ビタミンCの大量投与が、がん治療の切り札になる可能性もあるという。

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