過去に、脳梗塞や心筋梗塞を起こしたことのある人は、寒いトイレでなくても強くいきむのは危険だという。さらに、持病の悪化以外にも、急激な血圧の変化によって血の巡りが悪くなり、意識が消失するケースもあるというのだ。また寒いからといって、食欲に任せて、肉や揚げ物、チーズ料理など脂質の多いものばかり食べて、ついつい酒量も増えて……。そんな生活をするのも危険だ。暴飲暴食をしていた人がある日、いきなり大量下血で救急搬送されることも珍しくないという。

「大腸憩室(けいしつ)炎といって、大腸の壁が炎症を起こして壊れることによって、部分的に袋状に外に飛び出してしまうことがあるのです。そこに便が溜まると、炎症がさらに悪化して大出血を招きます。食の欧米化に伴い、最近多くなっている病気の一つです」(同) また、大久保医師は、意外な病気が便秘の原因になることがあると指摘する。「糖尿病の人は、その合併症である神経障害によって便秘が起こります。パーキンソン病や脳神経系の病気でも、初期から便秘に苦しむ患者さんが多いし、甲状腺の機能が低下している人も、便秘からお腹が張り、不快感などを訴えます」

 一方で、病気の治療薬の副作用で、便秘が起きることも少なくないと言う。「排尿障害の薬である抗コリン薬は、便秘を起こす原因になります。中高年になって前立腺肥大でオシッコが出にくくなり、薬をもらっている人は気をつけてほしいですね。高血圧の薬で便秘を起こしやすいのが、カルシウム拮抗薬。降圧薬としてはポピュラーな薬ですが、便通が悪くなる人がいます。他にも、抗うつ薬が便秘の原因になることも。50代前後の男性はうつが多いんですが、処方された薬で便秘がちになったと、相談してくる方は多いですね」

 さらに、この季節は、かぜ薬にも要注意だという。「咳止め成分を含む処方薬や市販薬の中には、リン酸コデインという成分を含むものがあります。一時的に消化器官の動きを鈍くするために、副作用で便秘が起こるのです」(同) かぜをこじらせ、慢性的に咳止めを飲んでいる皆さんは注意が必要だろう。では、重度の便秘を患わないためには、どうすればいいのか?

 まずは生活習慣の改善が必要だという。大久保医師が勧める便秘の解消法は、水分摂取、食生活の改善、運動習慣の“三原則”である。まずは、便が硬くならないように水を飲む。「成人男性なら1日2リットルは水を飲んでほしい。多すぎると思うかもしれませんが、水はノドが渇いたときにだけ飲むのではなく、量を決めて、しっかり飲む習慣をつけてください。特に、最近は冬でも暖房のせいで、ひどく乾燥しています。だから意識して飲まないと、すぐに脱水ぎみになってしまいます」(同)

 だが、前立腺が肥大ぎみの中高年男性は“トイレが近くなるから水分は摂りたくない”といって、水を飲みたがらない場合が多い。これが便秘の原因になるという。同医師は続けて、「アルコール類は水分に含めないでください。酒は脱水を起こします」と注意を促す。ただ、心臓や腎臓に持病がある人は、水分制限がある場合も。主治医から水分の制限を指示されている人は、水分を摂りすぎないよう注意してもらいたい。

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