自民・小泉進次郎「選挙のキーマン」の超人気ぶり

 最大政党の“二枚目”といえばこの男。不可能を可能にし、勝つべくして勝つ。裏表が一切ない「正面突破」をご覧あれ!

 永田町が一気に選挙モードに突入した。安倍晋三首相の側近である下村博文総裁特別補佐が2月7日、「年内に(解散の可能性は)90%くらいある」と発言。今夏の“衆参ダブル選”を強く匂わせたのだ。「この発言で、党員全員が臨戦モード。その結果、どの事務所でも、“あの人”に協力を仰ごうと、必死の接触が水面下で繰り広げられています」(自民党関係者)

 党内で今やアイドル級の人気を誇る“あの人”とは、ご存じ、小泉進次郎衆院議員(34)のこと。各地元での応援演説の要請や、選挙用ポスターを一緒に撮影する依頼が殺到し、その光景は“進次郎詣で”と呼べるほどだという。とはいえ、現在の安倍政権は支持率が安定。年明け以降に進んだ異常な株価の下落や、甘利明・前経済再生担当大臣のスキャンダルをものともせず、1月末の世論調査では支持が51%(毎日新聞)と、約2年ぶりに5割台を回復しているのだ。それにもかかわらず、官邸すらも進次郎人気にあやかろうとしているという。

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が話す。「支持率と選挙は別の話。たとえダブル選にならなかったとしても、今回の選挙は決して楽ではありません。なぜなら、憲法改正を目指す安倍首相は、そのために必要な議席を何が何でも取りたいのです」 現在、改憲には衆参それぞれで3分の2以上の議席が必要となるが、自民は参院でそれを満たしていない。そのため、党全体で気運を盛り上げて参院での大勝を狙うのだが、その際にネックとなるのが“沖縄戦”だ。政府が進める、名護市辺野古を埋め立てての米軍・普天間基地移設の反対派のボスとして、現在の沖縄県知事である翁長(おなが)雄志氏が立ちはだかり、2014年に行われた前回の衆院選で、全体では大勝した安倍自民党を、沖縄4選挙区では全敗に追い込んでいるのだ。

 しかも翁長氏は、同年に行われた名護市長選や自らが戦った沖縄県知事選でも、当時の自民党幹事長だった石破茂氏や谷垣禎一氏が同党系候補者の応援のために現地入りしていながら、完勝を収めている。

 このような戦歴から、翁長知事は“無敗の翁長”の異名を持ち、「今夏の参院選でも、沖縄・北方担当大臣の島尻安伊子議員(沖縄選出)が彼の前に屈しようとしています。島尻氏は2月9日の記者会見で、北方領土の一つである『歯舞(はぼまい)』の読み方が分からず、“ハボ……、えー、何だっけ?”と言葉を詰まらせ、担当大臣としての最大懸案事項の一つが頭に入っていないことを全国に露呈。もともと厳しかった彼女の選挙情勢は、さらに厳しくなりました」(地元関係者)

 現職閣僚の落選となれば、政権にはこのうえない痛手。改憲など夢の話だが、自民には勝利をもたらす隠し玉がある。それが進次郎氏だ。先の1月24日に投開票れた沖縄県宜野湾(さぎのわん)市の市長選。同市は普天間飛行場を抱えるだけに、「政府=移設派」と「沖縄県=反対派」との“代理戦争”に発展。菅義偉官房長官が「宜野湾市長選は必ず勝利する。それも大勝してみせる」と豪語するほどだった。その自信の根拠こそが、進次郎氏の現地投入である。

 同氏を長年取材してきたノンフィクションライターの常井健一氏が、こう語る。「沖縄での選挙は独特の風習があります。選挙戦の追い込みの段階になると“Vロード”といって、各陣営の運動員が幹線道路に出て、候補者ののぼりを持って歩道に列を作るのです。特に無党派層の有権者たちは、この光景を見てどちらが盛り上がっているのかを意識し、投票するといわれています。そして、進次郎氏が地元入りしたのが、まさに投票4日前でした」

 地元農協を隣に見る、市民会館前に集まった大勢の市民を前に、進次郎氏はまず「農協の皆さん、自民党農林部会長の小泉進次郎です」と切り出した。「ここでまず、“農協の票”をがっちり掴んだのではないでしょうか」(常井氏) 続けて、進次郎氏は「20年間止まった歯車を前に回そう」と訴えた。「市内にある普天間基地の移設先を名護市辺野古に決定したのは、父親の純一郎氏の内閣時代。“普天間の危険除去は私の使命だ”というメッセージを有権者に送ったのでしょう」(常井氏)

 移転先はともかく、基地の移設は宜野湾市民の念願。その気持ちを汲んだのだ。盛り上がる応援演説中、地元の小学生らが進次郎氏に近寄るハプニングが発生したのだが、その瞬間、彼は、「この子たちは私を、この前『下町ロケット』(TBS系ドラマ)に出た人と間違えているかもしれない」と、兄で俳優の小泉孝太郎氏を引き合いに出し、会場を爆笑の渦に変えた。

「(進次郎氏の演説で)陣営の運動員の士気が大きく上がったことは間違いないでしょう。それがVロードの盛り上がりにつながり、接戦の選挙を制したのだと思います」(常井氏) そう、自民不毛の地で、政府の支援を受けた佐喜真淳氏が、翁長知事が推す候補者を大差で退けたのだ。このキーマンぶりには、「さすがに安倍首相も舌を巻いた」(自民党中堅議員)

 さらに、前出の鈴木氏は進次郎氏の今の立場を、次のように賞賛する。「そもそも、応援演説で壇上に立ち、候補者をアピールするのは幹事長の仕事。選挙の票読みをする裏の仕事はともかく、今や、幹事長の“表の仕事”は、進次郎が一身に背負っているという空気感はありますよ」

 さらに官邸は、同じくアキレス腱である“農村票”でも期待しているという。かつて、地方の農村は自民党の大票田だったものの、昨年の10月、政府が環太平洋連携協定(TPP)に大筋合意したことで人気がガタ落ち。業界紙である『日本農業新聞』が直後に実施した世論調査では、安倍政権の支持率は18%と、かつての蜜月がウソかのような現実を突きつけられたのだ。「その逆風の中、進次郎氏は、“TPP地方キャラバン”と称して、11月から全国を行脚。さらに、“古米の味を知るために試食会を開こう”などと業界のために動き、支持を集めているのです」(全国紙政治部記者)

 その一方、農協や漁協などと強いつながりを持つ農林中央金庫に対して「融資のうち農業に回っている金額は0.1%しかない。農家のためにならないなら、いらない!」と、手厳しい“進次郎節”も炸裂させている。「進次郎氏の最大の強みは、徹底した現場主義。批判や反対がある現場にあえて飛び込み、直接話し合うことで彼らの本音を聞き出す。そのうえで解決策を練っていくというのが、彼のスタンスなのです」(鈴木氏) だからこそ、耳の痛い話を切り出されても、彼らからの支持が切れないのだ。官邸の要求は、それだけにとどまらない。若者の支持までも、その双肩に担わせようとしている。今夏から選挙権が18歳以上に引き下げられるが、「自民党はシルバー層を意識した政策を打ち出す傾向があり、若者の自民離れにつながっています」(常井氏)

 そこで安倍政権は2月3日、「2020年以降の経済財政構想小委員会」の事務局長に進次郎氏を起用。若者が不安を抱える年金などの社会保障問題について議論させることにしたのだ。「参院選で改憲を実現するためにも進次郎氏を“表の顔”に据え、若者票や女性票の取り込みを図っていく考えなのでしょう」(前同) 事実、党が制作する若者向けのポスターの中央には、進次郎氏の写真がデザインされる見通しだ。

 “一強”と呼ばれる安倍政権が、なりふり構わず、その人気にすがる進次郎氏。敵を味方に変え、味方をさらに引き込む、まさに選挙勝利のキーマンが、今夏、どのような“伝説”を作るのか注目だ。

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