桃の節句に食べるひし餅は3色のコントラストがとてもキレイで、行事に彩りを添えてくれます。地域によっては2色だったり5色だったりするそうですが、近所のスーパーなどでは3色のひし餅が売られているのをよく見かけます。皆さんも何気なく見ていたけれど、なぜひし形なのか、色に意味はあるのか、よく知らない人もいるかと思います。そこで、ひし餅の由来を栄養素とともに紹介します。
3月上旬の巳の日、つまり「上巳の節句(桃の節句)」には春の七草である母子草を使った緑色の団子を食べていました。しかし、「母と子をついた」餅を食べるのは縁起が悪いということで、今ではヨモギが定着しています。そこに江戸時代から、菱の実を入れた白い餅が加わります。さらに、明治時代になるとクチナシの赤が加わり、3色のひし餅となりました。クチナシの赤は餅と合わさると桃色になるため、一般的に下の段から緑、白、ピンク、となります。
緑色は厄除けと健康を表わし、白色が子孫繁栄と長寿を願い、赤色は魔除けの色です。また、春の情景も表していて、雪の下(白色)では若芽(緑色)が芽吹き、雪の上では桃の花(ピンク)が咲く、という意味も込められています。現在のひし形になったのには説がいくつかあり、民俗学で心臓の形を表しているとする説や、陰陽道で女性が方形を表わしたことからひし形になったという説や、武家の家紋がひし形だったという説などさまざまです。そんな歴史といわれのあるひし餅の栄養は次の通りです。
●緑色のヨモギ
豊富な食物繊維が便秘解消に効果があり、βカロテンが皮膚や粘膜を健康に保ちます。また、クロロフィルが貧血の予防と改善に努めます。
●白色の菱の実
漢方薬として用いられ、滋養強壮効果があるとされています。葉酸を多く含むため、肌トラブルの改善にもよいかもしれません。
●桃色(赤)のクチナシ
クチナシの実をお湯で煎じると整腸作用、解熱作用、血圧降下に期待ができます。クチナシの実自体にも、鎮静作用があり、口内炎や不眠症に効果的であると言われています。
いかがでしたか。このような背景と効能を知ることで、あらゆる意味でよりいっそうひし餅が美味しく感じられるのではないでしょうか。残念ながら私は男なので、ひし餅を買ってひな祭り……ではなく、起源である上巳の節句(身のケガレを払う宴)をしたいと思います!
長谷川正和
86年、神奈川県生まれ。男性のハンドモデルとしてコマーシャルから広告、再現VTR等に出演。物心ついた頃からお腹が弱いため、身体の「中身」のスキンケアも徹底している。