「韓国では、金融機関や研究所、交通機関・水道・電気などのインフラ設備でほぼ毎年、原因不明のシステムダウンが起きています。これがすべて北朝鮮によるものとは言い切れませんが、相当数に関与していることは間違いないでしょう」(軍事評論家の古是三春氏)

 中でも、国家情報院が政府に対して警戒を求めているのが原子力発電所。サイバー攻撃に晒され、セキュリティがダウンしたところに爆発物でも仕掛けられるような事態となれば、それこそ“貧者の核兵器”と言える被害が予想される。「北朝鮮のサイバーテロは単なるシステムダウンや社会混乱が目的ではありません。軍事機密を盗み出したりセキュリティや防御システムを混乱・無効化することで、直接的な武力攻撃の支援につなげる手段なのです」(警視庁関係者)

 偵察総局の中で暗殺、拉致、破壊活動を行うのは「第2局」。韓国の国家情報院は、金寛鎮・大統領府国家安保室長と尹炳世・外交部長官、韓民求・国防部長官らが、この暗殺のターゲットになっているとして、警戒を強めているという。そして、武力攻撃を行うのは「偵察総局」だけに留まらない。「北朝鮮には長い伝統を持つ軽歩兵教導指導局――通称“特殊第8軍団”という特殊部隊があります。主な任務は、やはり破壊工作。他国の要員と違い、帰還を考えない“片道切符”の工作員が揃う、筋金入りの部隊です」(前出の辺氏)

 いわば“鉄砲玉部隊”の第8軍団だが、その人数について、韓国の国防白書はなんと約18万人と報告している。朝鮮人民軍は総勢約120万人というから、実に15%が特殊部隊員という計算になるのだ。軍事ジャーナリストの井上和彦氏は、この部隊の狙いに関してこう分析する。「彼らは空港、鉄道、さらにはショッピングセンターなどにおける銃火器攻撃や破壊活動の他、水源地に毒をバラ撒くといった無差別殺戮も辞さない部隊。韓国の国家情報院も、この毒物テロを警戒しています」

 彼らの侵入方法は国境地帯に秘密裏に掘られた「南侵トンネル」といわれる地下通路や、夜陰に紛れての水路潜入など。一説には、韓国内ではすでに3万人の特殊部隊員が“Xデー”の合図を待っているという。そして、さらに北朝鮮はその“最終戦争”の切り札も用意しているというのだ。「北朝鮮は、12年に“全面戦争が勃発したら、我々は核を使うまでもなく二度にわたって敵国を廃墟にできる”という不気味な声明を出しています。これが意味するメッセージは“EMP爆弾の開発が完了しているぞ”ということでしょう」(辺氏)

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