死を招く「本当に危ない健康法」大検証!の画像
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 健康な体というのは何物にも代えがたい宝。いつまでも元気な肉体を保持したい。いい方法があれば、ぜひ試したい――。とは言うものの、世にあふれる「健康法」の中には、ずいぶん怪しいものも存在し、中には死を招きかねない方法もあるのだ!

『おやじダイエット部の奇跡』(マガジンハウス)などの著書で知られるノンフィクション作家の桐山秀樹さんが、61歳という若さで2月6日に急逝した。「桐山氏は糖尿病との診断を受けたことを契機に、糖質制限ダイエットを実施。わずか3か月後には体重が約20キロも減り、血糖値や血圧も、たちまち正常値に戻ったことに感動し、亡くなるまで“糖質制限ダイエットの伝道師”として活動していました。一度お話を伺ったことがあるんですが、ソースにとろみをつけるための小麦粉も摂取しないなど、かなりストイックに糖質をカットなさっていた印象です」(健康ジャーナリスト)

 主食のご飯、パン、麺類などの炭水化物(糖質)を抜くだけで、肉や魚などのオカズは好きなだけ食べていい、お酒もウイスキーや焼酎などの蒸留酒はOKという、この痩身術。従来の糖尿病の食事療法のような、ややこしいカロリー計算もいらなければ、何よりオカズを好きなだけ食べられるので無理なく痩せられるという手軽さが受け、ここ10年ほどのうちに一気に世界中に広がった。だが、『日本人だけが信じる健康常識』(角川oneテーマ文庫)などの著書もある元米イリノイ工科大学助教授(化学科)の生田哲薬学博士は、「極端な糖質制限は、命さえ落とす危険性がある」と警告する。

 糖質制限で体重が減るのは当然で、「タンパク質、脂肪と並ぶ3大栄養素のもう一つである糖質をカットするわけですからね。タンパク質、脂肪はいくら食べていいといっても、そう食べられるものではない。その結果、1日に摂取するエネルギーより、身体が消費する分のほうが多くなり、体重が減るのです」(生田博士)

 しかし、ただ痩せるのと健康的に痩せるのとの間には、大きな隔たりがある。「糖質制限をすると、栄養素をエネルギーに変えたりする酵素の働きを助けるビタミンやミネラル、また不要物質や有害物質の排泄を促すファイバー(食物繊維)などが不足し、それらが機能しなくなります」(前同) 米ハーバード大のテレサ・ファング博士が、約13万人を対象に20年以上追跡調査した結果によれば、特に厳しい糖質制限をした場合、普通の食事をしていた人より心筋梗塞が1.4倍、がんの死亡率は1.7倍にもなったという(2013年)。「糖質制限を5年以上続ければ、明らかに死亡率が高くなります。糖質制限ダイエットのもとは40年以上前に米国で考案されましたが、これが、“夢のダイエット法”でないことは明らかです」(同) 桐山氏の場合、このダイエット法、それも厳しい制限を5年以上やっていた。その前に糖尿病の期間が長く、心臓病も抱えていたことから、糖質制限だけが急死の原因とは断定できないが、特定の栄養素を全面カットするようなことは、注意が必要だろう。

 ダイエットといえば、近年、食事と運動のマンツーマン指導を謳(うた)うスポーツジムが話題になっているが、こちらはどうなのか。「極端な食事制限と強制的な筋トレをやらされれば、エネルギーを消費し、痩せるに決まっています。ただし、あまりに極端だと病気になります。何十万円も払う価値があるか、よく考えて始めるべきだと思いますよ」(同) なお、ダイエットに成功してジム通いを止めると、たちまち以前の体に戻ろうとする「ホメオスタシス機能」が働き、ガツガツ食べてしまい元の木阿弥になってしまうケースも少なくないとか。せっかくの高い料金が無駄になってしまうこともあるので注意したい。

 それでは、やはり近年人気の、バナナやリンゴなど1種類の果物だけをとるダイエット法はどうか? 「ひと言でいえば、絶食状態よりちょっと多めのカロリーをとるだけなんですから、かなり減量できるのは当たり前。というか、これでは完全に栄養失調になり、痩せるというより、やつれます。確かに、たとえばリンゴには“医者いらず”といわれるほど重要な栄養素があるのは事実。しかし、その効果もキチンと食事したうえでのことです」(同) 以上、いずれにしろ偏った、また急激な食事制限は逆に健康を害するし、楽なダイエット法もない。日々バランスのいい食事を「腹八分目」とり、食生活を保つことが一番のようだ。

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