今年はじめての海外レース、「ドバイワールドカップデー2016」(3月26日、メイダン競馬場)が近づいてきました。僕がドバイを訪れたのはデビュー7年目の93年……柴田政人さんのウイニングチケット、岡部幸雄さんのビワハヤヒデ、そして僕が騎乗したナリタタイシンの3頭が、牡馬三冠レースで激しい火花を散らした年です。

 あの頃のドバイは、人の数よりラクダの数のほうが多くて(笑)。まさか、現在のように、世界から注目される大イベントになるとは思いもしませんでした。ヨーロッパの競馬に負けないようなビッグレースを作りたい――シェイク・モハメド殿下の想いがカタチとなったのは96年です。

「ドバイワールドカップ」が創設され、世界最高の賞金を目指し、世界各地から一流馬が集結。日本からも、僕が愛してやまない先輩、石橋守騎手(現調教師)が、ライブリマウントで参戦(6着)。アメリカが生んだ名馬、シガーと走るという、当時の僕にとっては、夢のような体験をしています。お酒が入ると、ろれつが回らなくなり、僕ですら何を言っているのかわからなくなることがある愉しい先輩から、この時の話をもう何度も聞いていますが、そのたびに見せるうれしそうな顔を見ると、なぜか、負けた……と思ってしまう自分がいて。ホント、羨ましいかぎりです。

 その後、98年には、「ドバイターフクラシック(現ドバイシーマクラシック)」が、00年には、「ドバイデューティーフリー(現ドバイターフ)」が新設され、今では一日でGIが5つ、GIIが3つ。すべての1着賞金を足すと、1840万ドル。日本円で、23億2800万円という世界屈指の大イベントとして、世界中から注目されています。

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