乙武洋匡氏の不倫報道が話題だ。「週刊新潮」(3月31日号)が書いて以降、ほかのスポーツ紙や週刊誌も追っている。さまざまな情報が報じられているが、私が興味をもったのが「乙武仕掛け人は馳浩」とあった記述である(「週刊文春」4月7日号)。ああ、想像できると思った。私のなかで、馳氏と乙武氏はどこか同じ匂いがするからだ。

 90年代初めの新日本プロレスにおいて、馳浩はなくてはならない存在となっていた。タッグマッチでは自分が率先して試合をつくり、シングルでもタッグでもいい働きをする。メインイベントも中盤の試合も、どんな状況でも確実に会場を盛り上げた。嫌味なほど試合が巧い。団体にとってあれほど重宝した選手はいなかっただろう。

 しかし1995年に馳はあっさり政界へ転身する。馳のプロレスを楽しみながらも、この人は「今よりももっとどこか」を探しているんじゃないか?と薄々感じていた観客は妙に納得した。

 政治家は「いい人」よりも「したたかな人」のほうが似合っている職業だ。なのでそれまで馳に感じていたやり手感と巧さ、ソツのない立ち居振る舞いは政界ならもっとハマるはずだと納得したのである。政治家を目指す馳に期待したというより「おぬしもワルよのう」「永田町でもどうせ出世するんだろう?」というニヤニヤした見方だ。

 それと同じものを乙武氏にも感じていた。メディアでの完璧な受け答え、ウィットに富んだ言説。ソツのない立ち居振る舞い。まるで「鼻につくほど巧い」馳浩のプロレスそのものではないか。そして乙武氏も「今よりももっとどこか」を探しているんじゃないか? という匂いがプンプンしていた。その矢先に政界進出の噂が流れた。友人が代表をつとめる政党から出馬するという約束を反故にして、大きな党に乗り換えたとも報じられた。すでにしたたかな「政治家」だ。

 で、どうやらその大きな党で乙武氏に声をかけたのが馳浩氏であるという。馳はプロレスラー時代、アマチュアレスリング界とのパイプを利用してトップクラスレベルの人材をどんどん入団させた。叩き上げが多かった新日本プロレスの風景を変えてしまった。そろそろ馳は自民党でもそっちの面で影響力を発揮したいのだろう。

 でも今回はミソをつけたようだ。馳氏と乙武氏の2人のやり手は今後どう動くのか。それぞれ野次馬物件として注目しておいたほうがいい。

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