ドラクエは、ファミコン創生期の83年に発売された名作ゲーム『ポートピア連続殺人事件』で知られるデザイナーの堀井雄二氏が手がけた、ファミコン初のオリジナルRPGだ。「当時の少ない容量の中で考えられる最大限の機能を搭載。すべてが革新的でした」(ゲームショップ店主) その大ヒットを受けて、87年『ドラクエⅡ 悪霊の神々』、88年に『ドラクエⅢ そして伝説へ…』とシリーズ化。いずれも品切れ店が続出するなど、大きな社会現象となった。

 ドラクエと人気を二分するRPGである『ファイナルファンタジー』(スクウェア)の登場は87年だ。「『ファイナルファンタジー』(以下・FF)が斬新だったのは、いきなりプレイヤーが物語の中に放り込まれる点。唐突にゲームが始まり、徐々に壮大な作品世界が見えてくる感覚が新鮮でした」(ゲームライター)

 ただし、当初のFFはセールス的にドラクエと互角ではなかった。大ブレイクしたのは、90年の『FFⅢ』から。昭和文化研究家のミゾロギ・ダイスケ氏も当時を懐かしむ。「ラストダンジョンの難易度が高く、ジョブチェンジシステムや召喚魔法が初登場。FFのフォーマットはここで完成したと言えます。Ⅳからはスーファミにハードを移しますが、以後もドラクエとは良きライバル関係になります。まさか、そんなライバルを生んだエニックスとスクウェアが21世紀に合併するとは……」

 このRPGの2大巨頭をも凌ぐ、ファミコン史最大のビッグタイトルが、横スクロールアクションゲーム『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂)だ。その登場は85年である。「4000万本以上と世界一売れたゲームソフト。現在に至るまで、さまざまな派生作品、パクリ作品を生み続けています。マリオはファミコンを国民的娯楽に押し上げた大功労者でしょう」(ゲーム誌編集者)

 マリオとドラクエが世に出た80年代半ば以降、ファミコンは多様な展開を見せていく。漫画や映画などとのタイアップによるキャラクターゲームの増加も、その一つだ。「85年の横スクロールアクションゲーム『スパルタンX』(アイレム)は、当時の“中2マインド”を刺激するものでした。何しろジャッキー・チェンとのコラボですから。まぁ、ゲームの内容は、映画とはまったく関係がなかったんですが(笑)」(前出のショップ店主)

 キャラゲーには、プレゼント賞品などとして生産された稀少なスペシャルバージョンが存在することもあった。「その手のソフトは今も高値で取引されています。たとえば、85年の『キン肉マン マッスルタッグマッチ』(バンダイ)のカートリッジが金色のバージョンは、世界に8本しかなく、一時は100万円の値がつきました」(前同)

 キャラといえば、ハドソンの宣伝マンが、「高橋名人」として、有名になったのも85年。「ハドソンは“全国キャラバン”と称し、各地で自社ゲームの大会を開催していました。地元で高橋名人の16連打を生で見たという人も多いのでは?」(前述の編集者) この全国キャラバンの公ソフトの代表作といえば、86年のシューティングゲーム『スターソルジャー』だろう。「86年に公開された映画『GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦』で、2人の名人が腕を競い合ったのも、このソフトです」(ミゾロギ氏)

 86年は革新的な年だった。スポーツゲームも86年の『プロ野球 ファミリースタジアム』(ナムコ)から大きく進化したと、前出のゲームライターは語る。「各キャラに、技術の差や個性を持たせるという手法が生まれたんです」 また、同年にバンダイが『アスレチックワールド』というソフトと同梱で売りだした体感装置『ファミリートレーナー』も衝撃的だった。「マットの上で、走ったりジャンプしたり……。後の『ビートマニア』や『太鼓の達人』の源流ですね」 ディスクシステムの登場も86年のことだ。「ゲームを書き換えられる新しいインフラ自体が画期的でしたが、ソフトの第1弾だったアクションアドベンチャーゲーム『ゼルダの伝説』(任天堂)の面白さもあいまって、強烈に記憶が残っています」(前出の編集者)

 また、『スーパマルオ』(昭和通商)なる、初のお色気ゲームも密かに登場していた。「ただし、任天堂の抗議により短期間で発売中止に。そのため、出回った数が極めて少ない“幻のソフト”なんです」(前出のショップ店主)

 さまざまな異業種クリエイターがゲーム界に参入するのも、当時の傾向だった。「糸井重里氏による89年の『MOTHER』(任天堂)はその代表例。通好みのRPGでした」(ミゾロギ氏) 世はバブル絶頂期。ファミコンのスペックは、世の中の贅沢なニーズに追いつかなくなっていく。

 こうして、90年秋に16ビットCPUを搭載したスーパーファミコンがデビューする。「91年に『FFⅣ』、92年に対戦格闘ゲーム『ストリートファイターⅡ』(カプコン)、レースゲーム『スーパーマリオカート』(任天堂)、『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』など話題作が立て続けにリリースされることで、スーファミはゲーム界の覇権を握ります」(前出のライター)

 落ち物パズル系の人気アーケードゲーム『ぷよぷよ』(コンパイル)は、いろいろなハードに展開されたが、特に『す~ぱ~ぷよぷよ』の名で、スーファミに移植されることでファンを増やした。容量が増えることで、ファミコン時代よりもゲームの可能性は広がった。「ファミコン時代から続く『ダービースタリオン』(アスキー)シリーズのようなシミュレーションゲームも、スーファミで開花したジャンルですね」(前同) あぁ、タイトルだけでも大興奮! 今度の休みはゲーム三昧!?

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