すなわち、保険が必要なのは、妻子持ちの現役世代のみ。独身や、子どものいない既婚者は入らないほうがお得ともいえる。では、妻子持ち男性が選ぶべき保険とは一体何なのだろうか。前出の後田氏のおすすめはというと、「収入保障保険が利用しやすいと思います。死亡時から満期までの保険金額を月額で設定できるからです」

 たとえば、35歳~60歳までの期間、月額15万円を保険金として受け取れると設定した場合、35歳時点で死亡すれば、保険金は総額4500万円、55歳で死亡すれば900万円となる。一方、定期保険の場合、保障期間内であれば、30代で死んでも、50代で死んでも保険金は同額。幼い子を残して死亡したときほど、手厚い保障が受けられる収入保障保険は効率的ともいえるのだ。加えて、「勤務先に『団体定期保険』がある方は有力な選択肢になります。営業や宣伝コストがかからないため、保険料が安く、還元率が高いんです。保険会社の社員は、自社商品には入らず、団体保険を利用している人が多いです」(前同)

 また、住宅ローンを組んだという人は、保険の見直し時。「多くの場合、保険料は銀行負担で、団体信用生命保険に入ることになりますから、世帯主が死亡、または高度障害になった際、ローン残高は保険金で支払われます。その分、生活費は抑えられますから、死亡保険金の額を少なくし、月々の保険料負担を減らしましょう」(前出の佐藤氏)

 ちなみに、死亡保険を選ぶ際、“保険料を積み立てられる終身保険なら、老後に解約しても、払い込み総額以上のお金が戻ってくるので、損をしません”というセールストークをされた人もいるのでは!? 実は、このウマい話こそ損のモト!「老後まで解約しないという前提が怪しい。契約後、数年から数十年間は、いつ解約しても損をするんですよ。払い込んだ保険料より、多くの返戻金をもらえるのは60代以降の話ですが、そもそも、保険の解約率は毎年5~6%。これで計算すると、10年後に残っている契約は半分しかありません。数十年後という不確実性のリスクを、割り引いて評価しないといけません」(前出の後田氏)

 さらに、保険営業マンが終身保険を猛プッシュするのには、こんな裏事情も。「掛け捨ての定期保険よりも、終身保険のほうが保険料が高いので、営業マンの報酬も大きくなる。歩合制の報酬体系なので報酬の額自体が大きい商品を売りたがるのは当然です」(前同) 保険は“掛け捨て”を肝に銘じておこう。

 さて、死亡に続いて気になるのは大病。これは、独身でも気になるテーマだが、後田氏はこう言う。「保険会社で働く人の間では医療保険は不人気です。入院日額1万円として、10日入院した場合、もらえるのは10万円。この金額は保険じゃないと用意できない金額なのでしょうか。家族3人で帰省しても、これくらいかかりますよね? 医療保険は7万円を調達するために、10万円払い込むような保険です。死亡保険のように、数千万円を調達できるという話であれば、保険に入る意味もありますが、自己資金でまかなえる額を保険で備えるのは損するだけです」

 さらに、念頭に置いておきたいのは、入院した場合、果たしていくらお金が必要になるのかということ。「治療に数十万円かかっても、国の高額療養費制度がありますから、年収370~770万円の現役世代なら、自己負担額は月に9万円程度です。また、2011年のデータによれば、平均入院日数は35~64歳で27.3日、65歳~74歳でも44.8日です。さらに、企業に雇用されている人の場合、入院で長期間仕事ができなくなった場合、1年6か月は給料の3分の2が支給されます」(佐藤氏)

 医療保険のセールストークとして頻出する“差額ベッド代”や“入院中の食費”も、30日分程度であれば、自己資金でどうにかなりそうだ。逆に、現在の預金残高では不安な人は、「保険料を支払う前に、出費を見直して、貯蓄にまわす額を増やす努力を」(前同)

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