天皇賞・春を予想する際に意識しておきたいのは、「今の日本で、意識的に生産されたステイヤーはいない」ということである。競馬のメインが2400メートルから2000メートルにシフトしようとしているこの時代、3200メートルというのはかなり特殊な条件。阪神大賞典の3000メートルは、本番と距離が近いのだが、出走頭数とペースが原因となり、本番とはニュアンスの違うレースとなっている。

 天皇賞・春の過去10年について前走別成績を取ると、別定GⅡを走っていた馬が1~3着のほとんどを占めているのだが、阪神大賞典組が突出して強いわけではなく、日経賞、大阪杯、京都記念と立場は、ほぼ同じ。ゴールドシップのように稀有なステイヤーもいるが、一般論としては前走レースにこだわる必要はない。本当は血統にこだわりたいのだが、最近は母の父であってもリアルシャダイやサッカーボーイといった長距離定番種牡馬を見ることが少なくなっている。そうなると、過去の長距離戦実績や、長めの距離で厳しいラップを踏んだケース(それだけスタミナを要求される)を参考にするしかない。

 逆に、長距離の素養がない上位人気馬には要注意。過去10年の1番人気馬は〔1・0・1・8〕。短いところで、強さを見せた馬が、ここで祭り上げられて大敗というパターンには気をつけたい。過去の長距離実績といえば、一番分かりやすいのは菊花賞。今回は菊花賞馬が2頭出走予定だが、ステイヤーかどうかということでは、この2頭の間には大きな差があると考える。

 ◎はトーホウジャッカル。この馬の菊花賞はレコード決着になったように、道中緩むところがほとんどなく、かなりのスタミナを要求された。それに対して▲キタサンブラックの菊花賞は道中に13秒台後半という極端に遅いラップが連続。いったん休んでから7ハロン戦をやったような競馬で、スタミナ戦ではなかった。

 ○には、近走内容が充実しているゴールドアクターを取るが、この馬とて菊花賞では、◎の3着に負けていたわけである。もちろん、その後に○が成長しているので逆転の可能性はあるが、「長距離戦らしい長距離戦」になった場合には、◎が菊花賞当時の輝きを取り戻す可能性がある。

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