宝塚歌劇団は、未婚の女性のみで構成される、世界でも珍しい劇団だ。その中で、男性を演じる「男役」と女性を演じる「娘役」に分かれ、夢の世界を描き出している。では、どうやってこの2つは分かれているのだろうか。
まず基準となるのは、背の高さだ。身長163~166cmがボーダーラインとされており、高ければ男役、低ければ娘役となる。ただ、男役、娘役を最終的に判断するのは、タカラジェンヌ自身。自分の希望や、周囲のアドバイス等を受けて、入団時にはいずれかを選択する。
元星組トップ娘役だった夢咲(ゆめさき)ねねは、当初は男役志望だったが、音楽学校時代に上級生・鳳翔大(ほうしょうだい)にアドバイスを受け、娘役として入団。大きく花開いた。また往年のトップスター・天海祐希は「どちらでもいい」と考えていたが、周囲の猛プッシュで男役を選択。異例のスピードで月組トップへと就任した。
しかし、一度決まった「男役」「娘役」がずっと続くわけではない。自らの意志で、男役から娘役へと「転向」することも少なくないのだ。例えば、現・月組トップ娘役の愛希(まなき)れいか。彼女は入団時には男役だったが、3年目で娘役に転向。次々とヒロインを演じ、4年目にはトップ娘役に就任した。他にも、若葉ひろみ、紫城(しじょう)るいなど、娘役転向後トップに就任した例は多い。また、『ルパン三世』で峰不二子役を好演した大湖(だいご)せしるのように、男役時代のキャリアを生かした独特な女役像で人気を博すジェンヌもいる。
男役、娘役、両方がいるからこそ宝塚の舞台はより華やかで、見応えのあるものになる。タカラジェンヌたちは自分の意志で、自身と宝塚の未来を切り開いているのだ。