熊本地震、自衛隊の「心優しき大奮闘」の画像
熊本地震、自衛隊の「心優しき大奮闘」の画像

 地震との共存を宿命づけられた日本。“大きな揺れ”を計器が観測――その瞬間から自衛官は動き出していた!!

 4月14日21時47分、福岡の航空自衛隊築城(ついき)基地から2機のF-2戦闘機が熊本上空を目指して飛び立った――。熊本県熊本地方を中心とした直下型地震の発生から、わずか20分後のことだ。「2機のF-2は、領空侵犯対処任務で待機していた機体でしょう。任務は目視による被災地の航空偵察。夜間でしたので細かな様子は分からないはずですが、火災が発生していないかを確認したはずです」(軍事ジャーナリストの竹内修氏)

 いの一番にF-2が飛び立って以降、自衛隊は地元・九州の部隊を中心に、全国各地から続々と被災地に急派された。

 益城(ましき)町で震度7を記録した14日以降も、震度5クラスの余震が相次ぎ被害が拡大した熊本。16日未明には、14日を上回るM7.3、最大震度7の大きな揺れが襲った(後日、気象庁は16日の揺れを本震と発表)が、自衛隊は増強され、21日現在で投下人員は2万2000人(延べ8万人超)という大規模なものとなった。「救難ヘリ、大型輸送機といった航空機126機、艦艇15隻、無数の車両が稼働しています。東日本大震災(11年)同様、“オール自衛隊”で災害派遣活動を行っていると言えます」(軍事ライターの黒鉦英夫氏)

 惜しみなく人員と装備を投入する自衛隊だが、驚くべきはその初動の速さ。「熊本県知事から第8師団長(司令部=北熊本駐屯地)に対し、災害派遣要請があったのは発災の約1時間後でしたが、その前に自衛隊は初動のF-2に加え、UH-1、UH-60、U-125などを情報収集で出動させています。さらに第8偵察隊所属のファスト・フォース(人員6名)を益城町役場に派遣していたのです」(前出の竹内氏)

 “ファスト・フォース”は、東日本大震災の教訓から誕生した災害派遣の初動部隊で、全国津々浦々の駐屯地などに24時間365日態勢で設置されている。「遭難者や被災者が飲まず食わずで救助を待ち、生還できる限界は72時間とされていますので、ファスト・フォースの設置は効果絶大でしょう」(前出の黒鉦氏) 発災から1週間で大小700回近くの余震が続いた熊本。不安に駆られる住民には、消防、警察、そして何より自衛官の存在が拠り所になっているという。

「命の危険を伴う倒壊現場の捜索や、炊き出し、給水、物資の空輸など警察や消防の任務には限界があります。被災地では常に“最後の砦”となるのが自衛隊なのです。被災地では、自衛隊の車両や自衛官を見かけると会釈をする方が多いですし、自衛隊名物の“即席浴場”では、子どもと遊んであげる自衛官の姿もありました。目をつぶり、自衛隊の車両に手を合わせていたご年配の女性も、いらっしゃいましたね」(全国紙記者)

 現地で活動する陸上自衛官(30代男性)が言う。「我々は当たり前のことをしているだけです。ご自宅や親しい人を失くされた被災者の方には、なんと言ってよいのか……。避難所や車で生活をされている方には、早く笑顔を取り戻してほしいです。自分にも3歳の子がいますので、泣いてぐずっている子どもを見ると、そばにいって抱きしめてあげたくなりますね……」

 被災住民を思いやる、こうした自衛官の態度は随所に確認できる。「野外炊具という機材を用いて、被災者には湯気の立ったご飯やみそ汁を提供していますが、自分たちはそれを食べず、持参した菓子類や缶詰などを食べている自衛官もいます。泥で真っ黒な顔に、破れた手袋をはめ、トラックの荷台から物資を降ろす陸自隊員もいました。彼はいったい、どれだけ休んでいないのか……」(前出の記者)

 また、ガレキをかき分けて不明者の捜索に当たる際にも、細やかな配慮がみられるという。「自分の足元にご遺体があるかもしれないという配慮から、皆、ガレキの上を歩くときは慎重に動いています」(自衛隊関係者)

 東日本大震災のときは、こんなこともあった。「救援物資を輸送艦からLCACというホバークラフトで砂浜に揚陸するんですが、海自は、発災直後はこれを使うことを控えていたんです。津波で亡くなった方のご遺体が砂に埋まっていて、それを傷つけてしまうかもしれないという配慮でした」(竹内氏) ご遺体であっても、これをなるべく綺麗なまま遺族の手に戻す。これが自衛隊の流儀なのだ。こうした心優しき“日の丸軍”には、海外からも驚きの声が上がっている。「ソーシャルネットワークサイトには、自衛隊を称賛する声が溢れています」(ネットサイト記者)

 以下、一部を紹介すると、“自衛隊の皆さんに敬礼(マレーシア)、こんな軍隊は他にはない(台湾)、カリフォルニアで地震が起きたら州軍は風呂を用意してくれるのか(アメリカ)、日本人と自衛隊は強く素晴らしい(ベトナム)”。もちろん、各国の軍関係者も災害派遣のたびに自衛隊の能力を注視している。「初動の速さや、空海路での物資の輸送は戦時にも不可欠な技量です。また、オスプレイも運用可能な『いずも』型護衛艦の被災地への投入にも、注目が集まりました」(黒鉦氏)

『いずも』型はヘリ空母と呼ばれるが、災害派遣時には大量の人員、車両、物資の運搬もでき、艦内の施設で手術などもこなせる。「戦時に優れた能力を発揮する装備は、災害派遣時にも効果絶大であることが多いのです」(竹内氏) 強さと優しさを兼ね備えた自衛隊は、今日も被災地で汗を流している。

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