「ロシアの外交は狡猾ですからね。目の前に北方領土というニンジンをぶら下げられた状態で、功を焦るあまり譲歩しすぎたような内容を最初から出していると、最終的に莫大な金だけを出して終わり、という結果になりかねません」 頻繁に会談を持つのはいいが、「決定はまた今度」「次の会談で詰めましょう」とどんどん先延ばしにされ、さらに譲歩を引き出されていくリスクもあるのだ。

「さらに、近年のロシア偏重外交は、ずいぶんアメリカの不興を買っています。今回の訪露前も、西側諸国とロシア制裁で協調するオバマ大統領から首相に電話があり、伊勢志摩サミットで先進主要国が足並みを揃えることを重視して“ロシアに行くなら、サミット後にしてほしい”と安倍首相に翻意を迫っていたんですよ」(全国紙官邸番記者)

 ところが、安倍首相はそれを振り切り、プーチン大統領に会ったという。「サミット後だと、参院選との絡みで日程的に難しいですからね。もうすぐお役御免のオバマより、“票になるロシア”を選んだんでしょうが、次期大統領の最有力候補は同じ民主党のヒラリーですから、この“経済制裁破り”が今後の日米関係に大きな影響を及ぼさないとは言えません」(前同)

 首相の勇み足の結果、領土も戻らず金だけ取られ、米国ともギクシャク……と、長期的にはいいことナシの可能性もあるのだ。「それでも、首相は前のめりに行く気でしょう。今回の会談でプーチン大統領は1時間遅刻してきましたが、これは、待たせることで心理的に優位に立とうという駆け引き。そこから交渉を始める相手ですし、用心深くかかってほしいものです」(前出の外信部記者) “戦後体制からの脱却”を掲げる安倍首相。70年の時を超え、北の大地を取り戻すことはできるか――。

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