恐怖政治と粛清…北朝鮮「36年ぶり党大会」舞台裏の画像
恐怖政治と粛清…北朝鮮「36年ぶり党大会」舞台裏の画像

「北朝鮮が体制固めを進めていく中で、今回の決定がどのような意味合いを持つのか、しっかり分析していきたい」 5月10日、豪腕の菅義偉官房長官も、記者会見でこのような歯切れの悪いコメントしか残せなかった、北朝鮮の朝鮮労働党大会。5月6日から9日まで開かれた同大会は、36年ぶりの開催とあって世界中から注目を集めたのだが、終わってみれば、疑惑と困惑だけが残るのみだった。

「党大会は北朝鮮において、国家の行政機構よりも上位にあると定められているもので、今回は1980年以来の開催となりました」(全国紙政治部記者) もちろん、金正恩体制になってからは初の開催で、「“何かあるんじゃないか!?”と、10か国のマスコミ120人以上が現地入り。それなりの滞在費を支払ったうえで、取材に臨んだんです」(前同)

 孤立する独裁国家だけに、各国の政府筋も注目した現地からの報道だったが、「党大会は取材させてもらえず、平壌市内をグルグル回らされただけ。肩すかしもいいとこです」(同)と、狐につままれたような党大会だったわけだが、北朝鮮の国営放送によると、重大な出来事がいくつもあったことが分かった。中でも世界に衝撃を与えたのが、核保有宣言と人事改革だ。

 金正恩第1書記は自らの国を「責任ある核保有国」と堂々宣言。さらに、「米英露仏中の5か国すべてが核放棄しない以上、北朝鮮も核兵器を放棄しないということを意味する発言までしました。これは、もはや北朝鮮の非核化を外交対話で実現することは不可能になったことを意味します」(『コリア・レポート』編集長の辺真一氏)

 また、これと同時に並進するとしたのが、目下、絶望的とも言える経済や国民生活の改善だが、「食料や石炭を何トン増産するとか、電力をどの程度改善するのかという具体的な数値が一切あげられていません。22年前、金日成は亡くなる2日前に幹部を集めて電力対策を指示しました。それが孫の代になった現在でも、問題になったままということです」(前同)

 そして、大会最終日、驚愕の一報が世界を駆け巡った。金正恩氏が党委員長に、妹の金与正氏が党中央委員に就任したのだ。「言ってみれば、これこそが狙いでしょう。新たに設けた党最高位ポストに自ら就くことで、祖父・金日成、父・金正日と同格とし、正恩独裁体制を完全に確立するためと思われます」(同)

 こうしてみると、世界の目と国内の目を自らに向けさせたうえで、盛大にその地位と勢威をアピールしたことになるが、外務省関係者によると、裏にはキナ臭い事情があるという。「金氏は大会で、これまでの粛清を正当化したうえで、さらなる恐怖政治を示唆。それを証明するかのように、弾道ミサイルや生物化学兵器の責任者を大会中に粛清したとの話もあるんです」 粛清と今回の党大会は実は密接な関係にあり、「北朝鮮国内には金氏の暗殺やクーデター勃発の噂が絶えずあり、彼自身、常に恐怖に苛(さいな)まれている。それを防ぐためにも、このような大規模なイベントを開き、地位を高め、実妹を要職に就けたとも考えられる。つまり正恩体制は、それだけ不安定だということです」(前同)

 前出の辺氏も「厳しい船出どころか、難破する可能性もあります」と話す。36年ぶりの華やかなイベントは体制崩壊の序章となるのか、それとも、新たな道への分岐点となるのだろうか――。

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