このように想定される陸上戦闘だが、そのどの局面においても陸自隊員の技量は秀でているという。「ヘリを用いた急襲作戦には、多用途ヘリ・ブラックホークや大型輸送ヘリ・チヌークが活躍します。これらの機体は御嶽山噴火や東日本大震災、先の熊本大地震でもフル稼働しています。一方の中国陸軍は、ヘリの運用能力に乏しいことが弱点とされており、陸自が優位に立つはずです。米軍と共同訓練を重ねている韓国陸軍も、こうした作戦では中国よりも優れているはずです。ちなみに北朝鮮には、こうした作戦自体を遂行する装備がありません」(前同)

 また、陸軍の主役である戦車戦でも、陸自が頭一つリードしているという。「陸自の10式戦車は、米陸軍の主力エイブラムス戦車にも勝る能力があります。スラローム射撃といって、猛スピードで蛇行走行しながら目標を百発百中で撃ち抜くことができ、友軍とネットワークシステムも最新のものが搭載されています」(前出の黒鉦氏)

 韓国は自国産のK-2戦車こそ“最強”と胸を張るが、このK-2を巡ってはすったもんだがあった。「11年に完成するはずが大幅に遅れ、14年までずれ込みました。理由は国産と謳っておきながら、重要パーツはドイツなどの外国製をツギハギしたため、不具合が発生したためです。軍が要求した加速性能も実現できず、苦肉の策として土壇場で要求を緩和して取り繕った“いわくつきの戦車”ですよ」(前同)

 陸軍戦力で侮れないのは北朝鮮である。米軍のトップである統合参謀本部議長が、米上院の聴聞会で「(朝鮮有事の際は)北朝鮮が主導権を握ることもありえる」と証言しているのだ。「統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォード氏は、“北朝鮮は特殊部隊の投入、各種ミサイル、核兵器、サイバー攻撃を用いることができる。世界第4位の規模の軍事力がある”と分析しています。決して侮ることはできませんよ」(『コリア・レポート』編集長の辺真一氏)

 韓国の首都ソウルは、北朝鮮との最前線である38度線から、わずか60キロの距離にある。「北朝鮮は38度線付近に榴弾砲やロケット砲など、大量の火力を集中させています。これらが一斉に火を噴けば、ソウルはなす術なく火の海になってしまうでしょう」(前出の黒鉦氏)

 続いて海上戦力を見てみよう。戦闘艦艇数は中国が135隻とダントツ。海上自衛隊は65隻なので、2倍の艦艇を保有していることになる。「海自は、ハイテク護衛艦の代名詞であるイージス艦を6隻保有しています。イージス艦は、軍艦の天敵である敵戦闘機への攻撃能力が高く、高性能レーダーで同時に複数の敵機を捕捉、対空ミサイルを発射できる高性能艦です」(前同)

 中国海軍も“チャイニーズ・イージス”と呼ばれるハイテク艦を運用する。ルヤン「旅洋Ⅱ型駆逐艦がそれで、04年に1番艦が就役しました。ただ、その性能は未知数。外見上、すなわちハードウェアはイージス艦を思わせますが、実際の運用を司るソフトウェア部分の更新がうまくできているかどうか……。実績のある海自のイージス艦とは“似て非なるもの”と考えたほうがよいでしょう」(同)

 中国軍は陸軍主体であったため、中国海軍の歴史は浅い。各国のハイテク艦をコピーしまくり、見栄えは近代海軍を装うのだが、その実力には「?」マークが冠されるようだ。「中国海軍は、個々の艦艇の質は向上しているものの、乗組員の質、艦隊として行動するための戦術などは、まだ発展途上にあります。海上自衛隊に勝利できるほどのレベルにはありません。現時点では、外交的な配慮などで、政治が自衛隊の作戦行動に制限をかけることがなければ、中国空海軍の侵攻は十分に阻止できるでしょう」(軍事ジャーナリストの竹内修氏)

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