そのため、中国は“海底のハンター”潜水艦に活路を見出しているという。「戦闘艦艇135隻のうち、半数近くの61隻が潜水艦です。中国は原子力潜水艦も保有していますが、実際に海自艦と渡り合えるのは、ロシアから購入したキロ級潜水艦だけでしょう。ただ、それも、12隻のうち8隻しか稼動していない状態です。ロシアが整備契約を結ぶことを拒否してますので、数は揃っていても、それほど大きな戦力となっていないのでは」(軍事ライターの古是三春氏)
北朝鮮と韓国は、海軍力で大きく後れを取る。「北朝鮮に海軍はないに等しい。できることは、サンオ級などの小型潜水艦に武装工作員を乗せて運ぶことくらい。韓国も国産イージスなどハイテク艦を保有していますが、運用実績に乏しく、技術面の問題もあり、海自の敵ではありません。また、ドイツからライセンス生産で購入した潜水艦を自国の現代重工業が分解したら元に戻せなくなり、長らくドックに入ったままという情報もあります」(黒鉦氏)
最後に航空戦力はどうか。「まず北朝鮮空軍は、燃料不足により飛行訓練もままならない状況。無視してよいレベルでしょう」(前同) 韓国は空自の主力戦闘機であるF-15Jを凌駕する能力を持つF-15Kを運用するが、「問題が多い」(前出の防衛省幹部)という。「韓国空軍は訓練中の墜落事故が多いのですが、これは技術・整備面に問題があるからでしょう。90%を超えるといわれる空自の可動率に対し、韓国は60%程度ともいわれています。戦闘機が故障してもそれを直せないため、パーツを他の機体から取って取り替える“共食い整備”が横行しているとの噂も」(同)
中国空軍はどうか?「“見た目”は近代空軍そのものです。空自のF-15Jと比肩するロシアのスホイ27をライセンス生産したジャンジ殲撃11、空母艦載用の殲撃15と、各種取り揃えています」(黒鉦氏) ただ、現代の戦闘機戦闘では、戦闘機以外の性能が勝敗を分けるという。「長距離作戦を行うのに不可欠な空中給油機や、遠距離で敵を探知し、味方に指示を与える早期警戒管制機などの数が少なく、中国空軍が空自と戦って制空権を確保するのは難しいでしょう」(前出の竹内氏)
陸海空とも局地戦では、自衛隊は中国軍に対して優位に戦うことができることが分かった。ただ、このまま中国軍が右肩上がりで軍拡を続けると近い将来、これが逆転することも事実だ。また、軍事同盟を結ぶアメリカの次期大統領が共和党のトランプ候補になったら、日本には重大事だ。「彼の在外駐留米軍に対する外交スタンスは、ニクソン、カーター政権と非常に似ています。ニクソン元大統領は現役当時の70年代に在韓米軍の撤収を示唆し、続くカーター政権では、これを実行する動きを見せた。トランプ氏も、こうした流れを汲む外交スタンスとみています」(前出の辺氏) ご存じのように、トランプ候補は在日米軍の撤退も示唆している。日本は、自国の安全保障を巡る大きな転換の時を迎えているのかもしれない――。