ともあれ、掛布二軍監督の目と金本監督の「超変革」が相まって誕生した“打てる捕手”。しかも、阪神生え抜きとなると、どうしても、あの田淵幸一氏と比べたくなってしまう。だが、前出の江本氏は、「今の段階で比べるのは、田淵に失礼でしょ。好調をいつまで維持できるかが問題。ただ、形ができているから、彼にとっては大きなチャンス。私はずっと使い続けるべきだと思います」 確かに、まだ1か月の好調ぶりだけでは、あの天才ホームラン打者の名捕手・田淵氏と比較するのは早計だろう。それに、守備面でも課題が出てきている。「遠投100メートル、二塁への送球が1.8秒台という強肩は高校時代から注目されていましたが、現在の盗塁阻止率が2割以下と低いんです。ちなみに巨人の小林誠司は4割台。まずは阻止率を上げることが当面の課題です」(スポーツ紙記者)

 しかし、原口には田淵氏にないものがある。それは、どん底から這い上がったハングリー精神だ。「育成だったことばかり注目されていますが、実は2010年にドラフト6巡目で入団した選手。その後、12年に腰痛を患って自由契約となり、育成選手として再契約したんです」(前同) それだけではない。以降、シート打撃中に死球を受けて左手を骨折、さらには右肩を脱臼するなど、彼の野球人生は不運の連続だった。「それでも原口は入念なケアをして、それらを克服してきました。内野手転向の話もありましたが、捕手へのこだわりも強かった。本当にまじめな選手なんですよ。あんなに黙々と練習する選手、なかなかいません」(前出の在阪記者)

 エリート街道を走ってきた田淵氏とは対照的だ。「これだけ故障してダメになった場合、普通ならすぐにクビですよ。それを阪神は何年も育成選手としてチームに留めた。原口は、普通のエリートとは違う思いを持っているはずです。球団の温情に応えなければという強い思いがあるんだと思いますよ」(江本氏) 7年目で、やっと片鱗を見せた類まれなる才能と不屈の精神力、そして、それを温かく見守る球団――。原口が“ミスタータイガース”の称号を手にする日も、そう遠くないと見た!

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