宮藤官九郎「今でも18歳の頃のモヤモヤした気持ちが残っている」~18歳で居続ける人間力の画像
宮藤官九郎「今でも18歳の頃のモヤモヤした気持ちが残っている」~18歳で居続ける人間力の画像

 もう、今年で46歳になるんですけど、今でも18歳の頃のモヤモヤした気持ちが残っているんです。僕は、高校が男子校だったので、彼女っていう一番欲しかったものが、一番手に入らなかった。それを引きずっているのか。とにかく、その思いが強烈だったんです。

 まあ、別に共学に行っていたら、モテていたのかっていうと絶対そんなことはないと思うんですけどね(笑)。でも、共学だったらっていう可能性の世界なわけですから、モテる前提で話せるんですよ。そういう気持ちを真空パックして、そのまま大事に持っている感じなんですかね。周りにいる『大人計画』の人間も、同世代の人が多くて、彼らとずっと一緒に年を取ってきたから、その18歳のときの気持ちがいまでも抜けないのかもしれません。

 だから、脚本を書くにしても、映画を撮るにしても、どこかそういう要素が入っていないと自分の中で物語が作れないんですよ。

 今回の映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』は、好きな女の子に告白できないまま死んでしまった高校生が、地獄から輪廻転生を繰り返して、なんとか現世に蘇って、彼女に想いを伝えようとする話。まさしく自分がもし、17歳で、女の子と触れ合わないまま死んでしまったらどうだろうというのを考えながら撮っていました。僕は、男子高校生が考えているような子どもっぽいバカバカしいものしか興味が持てない。笑えるっていうのが一番で、あまり生々しいのとかは、できない。『中学生円山』のときは、好きなこと思いっきりやりました(笑)。

 韓国の劇場で上映したときは、女性にもドッカンドッカンうけていたんですけど、日本では、本当にサーッて音がするくらい観客が引いていくのが、分かりました。それだけお客さんをドン引きさせても、まだ仕事をもらえるのは、仕事の話がきたら、極力、断らないから。一個一個のクオリティが下がらないぐらいには、しているんですが、“これ、断りたくないな”って思ったのは、引き受けちゃう。だから、どうしても量産する形にはなってしまうんですよ。

 でも、そうすると、一個失敗しても、また次が控えているから、失敗が目立たない。話題にもならないまま、流れていってしまった作品もけっこうありますよ。そのぶん、忙しくはなりますけどね。でも暇だと不機嫌になる。それに、20代の仕事がない頃から、自分で勝手に忙しくしていたんです。自主的に公演をうったり、世には出ないシナリオ書いたりして。

 だから、忙しさは20代の頃から変わってなくて、仕事になったのが、最近っていうだけなんです。まあ、家族の評判は悪いですよ。“いつになったら、ゆっくりできるんだ”っていつも言われています。でも、つまんないんですよね。休んでも。無趣味だし。趣味がある人を羨ましく思うので、料理を始めてみたりしたこともあるんですけど、そういうことやっていると、ほかのことをしたくなるんですよね。

 脚本を書いたり、映画を撮ったりしているときだけ、ほかのことをしたくならないんですよ。やっぱり、誰かにやれって言われて、やっているわけじゃないですからね。18歳の気持ちをこれからも持ち続けて、仕事していきたいですね。

撮影/弦巻 勝


宮藤官九郎 くどう・かんくろう
1970年7月19日、宮城県生まれ。91年に、松尾スズキが主宰する『大人計画』に参加。00年のドラマ『池袋ウェストゲートパーク』の脚本を担当し、一躍脚光を浴びる。その後、『木更津キャッツアイ』などの数多くの人気のドラマの脚本を手掛け、13年にはNHK朝ドラ『あまちゃん』で第78回ザテレビジョンドラマアカデミー賞作品賞・脚本賞を受賞。脚本家として活躍するほか、05年には『真夜中の弥次さん喜夛さん』で映画監督デビュー。そのほか、俳優、ミュージシャンとしても活躍中。

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