一方、我々自身も有効な対策を取ることはできる。一つは、警察や自治体が配布する自動通話録音機を導入することだ。これは家に電話があると、実際に通話する前に音声ガイダンスで≪通話を自動録音する≫というアナウンスが流れるもの。証拠を残したくない詐欺師たちはすぐに電話を切り、被害を免れるわけだ。「警視庁と東京都で3万5000台を無料で希望者に貸し出しました。市販の自動通話録音機(約6000円)でも代用できます。これを導入した家庭での被害は、現在のところ報告されていませんね」

 常に留守番電話に設定しておき、すぐに電話を受けず、内容を確認してから、かけ直すという方法も効果的だという。芝山管理官は、こうした詐欺への対策が守るのは資産だけではないと言う。「本当に被害者はかわいそうなんですよ。詐欺は家庭を壊しますから。詐欺には、どうしても“だまされたほうが悪い”というイメージがつきまといます。被害者なのに、“なんでだまされたんだ”と家族から非難されてしまうのですよ。精神的に追い込まれて、自殺を図ろうとした方もいます」 まさに、悪徳の極みとも言うべき犯罪なのだ。

「被害額202万円というオレオレ詐欺の事例があったんですが、その2万円は何かというと、代理で金を受け取りに来た犯人に“子どものために、ありがとうございます。これ、手間賃です”と、被害者が現場で2万円渡したそうです。そんな金まで奪うのか、と思いました。だまされるのが当たり前なんです。親なんですから。子どもを心配する気持ちにつけ込む犯罪で、許せないですね」

 被害を防ぐために、芝山管理官は家族で事前に話し合い、ルールを作っておくことを推奨する。「電話では絶対にお金の話はしない、万が一の事態には合言葉を決めておく、などですね。また、犯人側は“携帯を落としたから”と、新しい番号に電話するよう誘導しますが、必ず、もともとの番号にかけてください」

 そして、実際に訓練を行うことが肝心だという。「本来の番号に電話することを念押ししてから親に電話し、“俺だけど、携帯なくしたから新しい番号にかけて”と言う。それで、もともとの番号にかけてくれれば成功です。ばかばかしい、と思われるかもしれませんが、一度、こうした訓練をしておくことで慣れる。それだけで、まったく違うのです」 まさに転ばぬ先の杖こそが、自分と家族を守る防衛術となる。自分たちは大丈夫と過信せず、対策に取り組んでほしい。

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