6月23日の国民投票で、決定的となったイギリスのEU離脱。欧州2番目の経済強国とEUとの“決別”は、各通貨を大幅に下落させるなど、世界経済に大きな混乱を巻き起こした。
麻生太郎財務相が緊急会見を開いたように、各国がその“負の波及”に戦々恐々とする中、ひときわ恐れをなしている国がある。「中国です。日米に対抗できる世界の経済大国を目指し、習近平国家主席は英国のキャメロン政権と蜜月関係を築いてきました。しかし、国民投票直後に、キャメロン首相が辞任を表明。この政権瓦解が、これまでの英中関係を吹き飛ばすことは必然で、中国経済崩壊の引き金となるかもしれません」(通信社記者)
最近の英中関係で、経済上での“大事件”といえば、中国製原発の輸出だろう。「安全性と信頼性が最も要求される原発を、その対極にある中国に頼るということで、国内でも相当な批判が出た。しかも、契約金額は約5兆7000億円。キャメロンなき次期政権での見直しは必至です」(前同)
6兆円が見直されるとしたら損失は大きいが、事はそれ以上に深刻だという。「インフラ輸出は、中国が大きな柱に据えようとしている一大プロジェクト。しかし、米国に輸出が内定していた新幹線が、この6月に白紙に。さらに原発まで見直されれば、米英の2大国から製品を拒否されたこととなり、世界中から信用を失うことになる」(同)
中国が抱える爆弾は、インフラ輸出だけではない。昨年3月に設立した、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の雲行きも、一気に怪しくなるという。「中国が、世界経済の中で自国のより良いポジションを築くことが最大の目的であるAIIBだけに、アメリカは設立から強く反対していました。一方、英国はいち早く参加を表明。かつて、世界の金融の中心にいた英国とすれば、現在の米ドル中心の経済から脱却するチャンスですからね。あえて中国の誘いに乗ったんです」(シンクタンク関係者)
中国側も、英国の狙いを理解したうえで、英中による“新経済軸の建設”を画策するが、英国がEUを離脱すれば話が違ってくる。「ただでさえ市場で存在感が希薄化している英国が、EUの後ろ盾をなくせば、影響力低下は必至。事実、離脱決定後に英国国債は格下げされている。今後、英国につられてAIIBに参加した国々が手を引く可能性も出てきます」(前同)
何より、中国にとっての最大の痛手は、英国が欧州進出の“足場”としての役割を果たせなくなることだ。「EU加盟の最大メリットは、圏内での人や物、金の移動が自由になること。そこで中国は、英国を足掛かりにしてヨーロッパ全体へ手を広げる目論見でしたが、英国のEU離脱で、その道は閉ざされた。そのために、人民元建て国債を470億円起債するなど、キャメロン政権に飴玉を握らせてたんですが……」(前同)
これまでの接待攻勢が、すべて水泡に帰した“赤い帝国”。その行く先に待つのは経済崩壊だろうか。