――五輪の舞台には魔物が棲(す)んでいる。よく使われる言葉ですが、魔物が棲んでいるのは五輪の舞台ではなく、本当は選手の心の中で。それに打ち勝って、初めて道は拓ける――勝負の世界は、いつでも、どこでも同じです。

「武さんは、どうやってプレッシャーと闘っているんですか?」 いろんな選手から聞かれますが、正直、正解はありません。強いて言えば、そのプレッシャーの掛かる場に立てる自分を誇りに思うことでしょうか。それは、誰かからポンとプレゼントされたものではなく、自分の力で勝ち取ったものなんですから。

 参加することに意義があると思っているのは選手以外の人で、選手は、100%、金メダルを狙っています。まともに戦ったら力は相手が上だろうが、下馬評に圧倒的な差があろうが、そんなものは関係ありません。やるだけやって、すべての力を出し尽くした先にメダルがある――世界と戦うというのは、そういうことなんだろうと思います。

 頑張れ、ニッポン! 出場するすべての選手にエールを送りながら、皆さんも、4年に一度の祭典を楽しんでください。そして4年後は――東京です。

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