――一糸まとわぬ姿を披露されたわけですが、緊張はしました?

村川:特にはしなかったですね。カメラマンの鈴木一博さんとはこれまで何度か御一緒したことがあって、絶対に綺麗に撮って下さるという信頼があったんです。だから、ただ身を委ね、身も心も解放できました。ただ、表情や仕草は、監督とかなり綿密に打ち合わせをしましたよ。お気に入りは、園子が夫に抱かれている最中、鼻をポリポリかくシーンですね。

――男は必死なのに(笑)!

村川:そうそう(笑)。でも、女はまったく別のことを考えてる。世の女性たちの秘密を明かしちゃいましたね。

――夫に抱かれるのと、愛人に抱かれるのとでも、表現が全然違いますよね。

村川:抱かれる相手によってすべて変えているので、違いを見てほしいですね。その時、その時で純粋に園子の感情になっていて、旦那に抱かれるときは無の感情だったり……。

――下世話な言い方ですが、マグロということ!?(笑)

村川:そうですね(笑)。でも、体は勝手に反応しちゃう。それは女性が受け身であることの哀しさですよね。一方で、恋した男性に抱かれても喜びは一瞬で終わる……その儚さは自然と体現できたと思います。

――御自身の恋愛経験が生かされたりもしましたか?

村川:やっぱりまったく恋愛経験がないとこの役はできないと思ったので、今まで自分が積み重ねた中の、いろんな感情を引き出して、見直して参考にしました。撮影期間中は毎日、感情が揺れ動きっぱなしで、旦那に無理やり抱かれるという場面でも、涙が勝手にすっと流れたり。だから撮影が終わったときは、大事な人をいっぱい無くしたような、喪失感を感じましたね。

――そうなんですね。

村川:この映画での体験は人生の道しるべになったと思います。私自身が強くなれた感じがするんです。見えない壁を乗り越えられた、みたいな。

――奥が深そうですね。ところで、本作に出て恋愛観が変わったりはしました?

村川:以前から、私は園子の考えに寄ったところがあるんです。結婚に幻想を抱かないタイプで。それがより強くなっちゃいましたね(笑)。

――結婚はまだしなくてもいいと。

村川:そうですね、とりあえずは。結婚って素晴らしいなとは思いますけど、それ以上に窮屈なことのほうが多そうで。地元の友達とも約束をしたんですよ。

――約束?

村川:中学3年生のときに「一生独身を貫く」って……。もし結婚したら5万円払うって……。しかも3人に言っちゃったから、合計15万円(笑)。今でも、その友達に会うと「覚えてる?」ってよく言われますよ。

――親御さんは?

村川:母からは「結婚するな」って。

――どういうこと?

村川:結婚に向いていない性格だからって。たぶん、窮屈になってすぐ離婚したくなるから、今は止めなさいって。どんなにいい人がいてもダメですって(笑)

――厳しい~。つまり、村川さんは結婚するタイプではなく、一生恋愛するタイプなんですね。

村川:そうあれたらいいですね。恋多き女として(笑)。もっとも、女優という仕事はいろんな恋ができますからね、架空ですけど。

――恋人役の俳優さんに、本当に恋しちゃったりは!?

村川:10代の頃は恋愛経験があまりなかったので、相手の役者さんにドキドキしちゃったり、ちょっと引きずったりもしましたよ。でも、今はないですね。むしろ、終わったらスパッと忘れて「疲れた~」って(笑)。

――もしつきあうならどんな人がタイプ?

村川:年は上でも下でもどっちでもいいんですけど。私、普段は関西弁で、ついちょっとキツめなことを言うことがあるんです。だから、それを受け止められる人……って考えたら、年上かな。

――ちなみに、お酒はイケるほうですか?

村川:私、唎酒師(ききざけし)の資格を持っているんです!

――それは珍しいですね。

村川:元々、日本酒とワインが好きだったんです。最近は和に触れることが多くて、日本酒のことをもっと知りたいと思って、取ったんです。でも正直、勉強不足のところがあって、まだ唎酒師を名乗れないなって(笑)。女友達とは「和服を着て、ちょっとドヤ顔で日本酒を飲みに行こう」とは、よく話しているんですよ。

――村川さんが和服姿でお店にいたら、女将さんに間違えられそうですよ。

村川:そうなったら、接待トークで良ければ、してあげられますよ(笑)。

 静謐さの中に、どこか強さが感じられた村川さん。一人の女性として、女優として、これからも大きな飛躍を遂げることでしょう!

村川絵梨 むらかわ・えり
1987年10月4日、大阪府生まれ。A型。T163。2004年、映画『ロード88』で本格的女優デビュー。2005年NHK連続テレビ小説『風のハルカ』のヒロイン役に抜擢。以降、多くのドラマ、映画、舞台で活躍中。最新作にはドラマ『荒地の恋』『私の青おに』、『木曜時代劇ぼんくら2』、映画『ポプラの秋』舞台『たとえば野に咲く花のように』など。8月3日に写真集『Miles Away』(ワニブックス)が発売となる。

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