大谷、山田、筒香…プロ野球大スターの「甲子園時代」 “原石”はすでに輝いていた!の画像
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 今年も“球児たちの夏”がやってきた。8月7日に全国高等学校野球選手権大会が開幕したが、今をときめくプロ野球選手たちの甲子園での活躍は、いまだに強く印象に残っている。

 毎年夏の高校野球特集号では、実に800人もの有望選手を掲載するという専門誌『野球太郎』の持木秀仁編集長は、こう語る。「大谷翔平と山田哲人は、天性のアスリートで、違う競技をやっても一流になる身体能力を持った選手だと思います。それに対して、筒香嘉智と藤浪晋太郎は努力の結果、現在の自分を築いた選手だと思いますね」

 前代未聞の二刀流で、プロでも結果を出している大谷翔平(22=日本ハム)が岩手・花巻東のエースになったのは、1年生の秋。初めての甲子園は11年、2年生の夏だった。

「足の故障を抱えつつも、初戦の帝京戦に登板。田中将大に並ぶ高校2年生タイ記録の150キロを記録しました。1年冬からメジャーのスカウトが来る逸材でしたが、1日に白飯13杯のノルマに加え、寝るためだけの“寝部屋”も用意されるなど、体を大きく育てられました」(スポーツ紙記者)

 大谷といえば、12年、3年春の1回戦、大阪桐蔭の藤浪晋太郎(22=阪神)との“摩天楼対決”だろう。この試合の2回、大谷は藤浪からライトスタンドへ本塁打を放った。大谷本人は「スライダーでした。その前にスライダーを空振りしていたので、同じ球が来るだろうと思っていました」と語っているが、その一打はまさに鮮烈のひと言だった。

 地方予選、練習試合など年間100試合以上を観戦する高校野球大好き芸人のいけだてつや氏も、大谷の一打を甲子園で目撃した。「大谷君と藤浪君のあの試合は、2人が大きく、甲子園がずいぶん小さく思えましたね。大谷君のホームランも、監督さんがノックで外野フライを打つような、軽いスイングに見えたんです。投げた球と飛んでいった球が一致せず、えっ、あんなに飛んだの!? と衝撃を受けました」

 試合結果は11四死球9失点という大谷の乱調もあって、2-9で花巻東は敗戦。大阪桐蔭はそのまま勝ち進み、春の選抜を制する。同年夏も大阪桐蔭は甲子園で優勝。藤浪は20年ぶりとなる準決勝、決勝の連続完封、さらに決勝で史上タイの14奪三振、史上最速の153キロを記録し、春夏連覇に花を添えた。甲子園通算成績は76回を投げ、防御率1.07、奪三振90。

「夏の大阪大会決勝を深夜バスで見に行きました。大阪桐蔭は履正社に勝ったんですけど、藤浪君は試合終了後、ガッツポーズ一つせずに淡々と整列していたんです。激戦区の大阪で勝っての甲子園出場も通過点だと思ってるんだ! って鳥肌が立ちましたね。見据えてるものが違う、と思いました」(前出のいけだ氏)

 その大阪桐蔭には、中田翔(27=日本ハム)という先輩もいる。1年夏、2年夏、3年春の計3回、甲子園に出場した中田だが、「存在感は圧倒的でした。高1の夏に取材に行きましたが、3年生だった辻内崇伸(元巨人)や平田良介(中日)に囲まれても、全然1年生という感じはしませんでしたね」(前出の持木氏)

 逸話に事欠かない中田は、「気に入らない上級生を洗濯機に突っ込んだ」という伝説の真偽を番組でダウンタウンに聞かれ、「本当ではない」と回答。「洗濯機ではなく乾燥機に突っ込んだ」と真相を明かしている。

 大谷の3年先輩である花巻東・菊池雄星(25=西武)も怪物球児だった。3年春は決勝で長崎・清峰の今村猛(広島)との投手戦に0-1で敗れたものの、5試合40回を投げ、41奪三振、3失点で防御率0.68を記録した。

 その菊池の甲子園は09年の夏、準決勝で堂林翔太(広島)を擁する中京大中京に1- 11で敗れて終わった。背中痛(のちに肋骨疲労骨折と判明)のため先発できなかった菊池は、0-3とリードされた4回裏二死満塁の場面でマウンドに立つが、走者一掃の三塁打を浴びる。5回裏にも失点し、その回で降板した。

 いけだ氏は、見ていて辛かったと語る。「菊池雄星、こんな投げ方じゃないじゃん、と。この大舞台を目指してきて、思ったように投げられないのは、どれだけ悔しいだろうと思いましたね」

 試合終了後に菊池は、「最高の仲間のためなら、もう二度と野球ができなくてもいい、だから壊れてでも今日が最後の試合と思って……。自分を信頼してくれている仲間のためにマウンドに立っていたかった。みんなに申し訳ない」と号泣した。

「あの涙は忘れられない。だから、西武入りが決まってうれしかった。僕の勝手なイメージで“ホントのバケモンは西武に行く”というのがありますので(笑)。甲子園でやり残したことは、西武でやってくれると思います」(いけだ氏)

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