「宝塚の北島マヤ」と称された“超天才女優”とはの画像
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 宝塚歌劇団の元宙組トップ娘役、野々すみ花。宝塚を卒業後、舞台やテレビで活躍しており、話題となったドラマ『あさが来た』(NHK)や『重版出来!』(TBS系)で顔を覚えた方も多いだろう。

 野々すみ花は、タカラジェンヌ時代「宝塚の北島マヤ」といわれるほど、演技力に定評があった。1年目にしてトップスターの幼少時代役に抜擢された際は、“泣き”の演技ですごみを魅せた。その後も退団するまで、「憑依型女優」として数々の名演を生み出す。

 幼少の頃から、宝塚ファンだった父親に「宝塚に入れ!」と言われてきた彼女。6歳からクラシックバレエとピアノを習いはじめ、家でも発声練習をしたり、暗い倉庫の中から外に出て、光を浴びる姿をイメージする練習をしたりと、まさに『ガラスの仮面』の北島マヤばりに“演技の特訓”を重ねたという。

 宝塚に入った野々すみ花は、13学年上の大空祐飛の相手役として、宙組でトップ娘役に就任する。大空祐飛は、男役としての渋さと、芝居に定評があったため、二人は演技派コンビとして『カサブランカ』など数々の名作を生み出した。息の合ったコンビぶりは、学年差をまったく感じさせなかったが、真摯に作品に取り組むあまり「大ゲンカをした」ことがある。

 その事件が起こったのは、2010年の『誰がために鐘は鳴る』公演のとき。ヘミングウェイの小説をもとにしたミュージカルで、ヒロインのマリアを演じる野々は髪型で悩んでいた。役作りのためにベリーショートにするか、カツラで乗りきるか。一般の女性より女性らしさが求められる宝塚の娘役において、男役よりも短い髪にするのは、並大抵の勇気ではない。

 なかなか決断できない野々に、相手役の大空祐飛はイライラしてしまったのか「じゃ、切らなきゃいいじゃん! もう知らない!」と突き放した。衝突した二人の中に深い溝が生まれるかと思いきや、そのケンカの翌日、美容院で意を決しベリーショートにする野々のそばには、わざわざ車で駆けつけた大空の姿があったという。娘役の枠を超えた野々の役作りと、大空の包容力で『誰がために鐘は鳴る』は大成功を収めた。

 ちなみに、大空と野々がそろって宝塚を卒業する際、大空祐飛が受け取った花束は「紫のバラの花束」だった。宝塚の北島マヤは、“紫のバラの人”とともに数々の名作を残した。そんな野々すみ花の、今後の演技からも目が離せない。

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