実は、境界型地震の後には、“アウターライズ地震“が発生することも分かっている。「アウターライズ地震は、境界型地震によって断層が破壊されることにより“二次的に発生する“ことが分かっています。特徴は多くが津波を伴うことです。境界型であった1896年の三陸沖地震の後に同じ三陸沖で発生した1933年の地震は、アウターライズ地震であったと推測されています。先の震災のエネルギーはいまだに残っていますから、今後、数年以内に同じエリアでアウターライズ地震が発生することは否定できません」(島村氏)

 三陸沖は現在も“要警戒エリア“なのだ。海と陸のプレートがせめぎ合う地域では、境界型の地震が発生するリスクが高いことは分かったが、その典型例とも言える地域が首都・東京だという。「我が国の首都は、大きな地震が発生する運命にあると断じざるをえません。陸のプレートである北米プレートと海のプレートである太平洋、フィリピン海プレートがせめぎ合っているからです」(前同)

 地震が多いとされるメキシコやギリシャでも、2つのプレートを抱える程度。しかし、日本の首都東京は3つのプレートの影響下にあるわけだ。「防災上の観点から見れば、東京に国家の政経中枢を置くのは、極めてリスクが高いのです。東京都がまとめた首都直下型地震等の被害想定では、房総半島南沖の元禄地震型で死傷者約11万4000人。東京湾北部を震源とする場合は、死傷者約15万7000人という恐ろしいものです」(前出の田所氏)

 都では他にも、多摩地区直下型地震で死傷者約10万6000人、立川断層による地震で死傷者約3万4000人と被害を予測する。「震災以前は、海溝で発生し首都を襲う大規模地震は100年以上発生しないとの認識もありましたが、現在は“いつ起こってもおかしくない“という状況です」(島村氏)

 実際、東日本大震災後の13年に催された政府の有識者会議では、今後30年間に首都圏でM7級の地震の発生確率が、これまでで最高となる70%に引き上げられている。また、先に紹介したように茨城や千葉といった関東エリアで地震が頻発しているのも、首都を襲う大地震の襲来を示唆する“予兆“だという。「関東大震災のときも、1年以内に周辺の茨城や千葉で震度4クラスの地震が頻発していたことが分かっており、最近の状況に酷似しています」(田所氏)

 首都東京に迫りくる危機。では、その他のエリアはどうなのか?「まず挙げられるのが、伊豆諸島沖です。同地域は、東日本大震災を引き起こした太平洋プレートの強い影響下にある。震災のストレスは三陸沖からプレートに沿って南北に伝播していったと考えられますから、伊豆諸島沖は要注意です。また、北側への伝播を考えれば、十勝沖を震源として北海道東南部が被害を受けるかもしれません」(田所氏)

 フィリピン海プレートとの関連が強い南海トラフも要警戒エリアだ。「5月に海上保安庁が、南海トラフにこれまで見られなかったゆがみを発見しています。これはプレートが活発に動いている証拠でしょう」(前同) その南海トラフの西端にあたる日向灘(宮崎県)にも、注目が集まっている。

「M8以上の巨大な境界型地震が東京五輪までに発生すると指摘する識者もいます。政府や地元自治体も、警戒を強めています」(同) 95年に阪神・淡路大震災を体験した近畿地方でも、巨大地震発生のリスクが存在するという。「近畿地方には、活断層が無数に存在します。しかも、熊本地震を経て、そのストレスが東に伝播している中央構造線に貫かれている。構造線が近畿地方に点在する活断層に作用すれば、直下型の地震が発生する可能性があります」(同)

 中央構造線と交差し、新潟県南部から静岡県まで南北に走る巨大断層である糸魚川・静岡構造線も要注意。「長野県は同構造線を原因とする地震が発生した場合、最大で死者は7000人にのぼると想定しています。熊本地震を招いた布田川(ふたがわ)・日奈久(ひなぐ)断層は、30年のスパンでの地震発生確率がわずか3%程度だったのに対し、糸魚川・静岡構造線の場合は、その10倍の30%と予測されています。同エリアも警戒しておいたほうがよいでしょう」(同)

 平素からの防災意識が、いざというときの生死を分けることを肝に銘じたい。

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