田中角栄よりスゴイ! 歴代総理大臣「豪快秘話」の画像
田中角栄よりスゴイ! 歴代総理大臣「豪快秘話」の画像

 “コンピュータ付きブルドーザー”の異名を取り、会う人すべてを魅了したとされる田中角栄元首相。ただ、それは彼に限ったことではない。戦後、1億人超の日本国民を牽引した歴代宰相たちは、皆、人間的魅力に溢れていた!

 終戦後の混乱が続く1945年5月に第1次吉田内閣を発足させた吉田茂元首相。“ワンマン宰相”として知られる彼は、豪快なエピソードには事欠かない。

「真冬に都内で選挙演説していた吉田首相に、聴衆から“話を聞いてやっているのに上着を着たままとは失礼だ。脱げ!”と野次が飛んだときのことです。彼はすかさず野次の相手を睨みつけ、“外套を着て話すから街頭演説と言うんだ。バカ者!”と一喝。聴衆の喝采を浴びたという話があります」(永田町関係者)

 そんな吉田元首相の口癖が、「戦争で負けても外交で勝った国はある」だった。「ある意味、彼はこれを実現しています。日本を極東共産化の防波堤としたい米政府は、吉田内閣に再軍備を執拗に迫ったといいます。ところが、経済を優先したい吉田首相はその要求をかわし続け、代わりに自衛隊を創設しました。いまだ自衛隊が公式に“日本軍”と認められていない不幸は、この吉田裁定が原因とも言えます」(政治ライターの鈴木文矢氏)

 吉田元首相は在日米軍を「番犬のようなもの」と言ってはばからず、日本独力で国防を担う場合のコストを大きく削減、余剰分を経済対策等に回した。「ただ、“中途半端”な立場に置かれることになった自衛官の苦衷は痛感しており、幹部自衛官を養成する防衛大学の第1期生の卒業式でこう訓示しています。“君たちは在職中、国民から感謝されたり歓迎されたりすることなく自衛隊を終わるかもしれない。ご苦労だと思う。だけど、君たちが日陰者であるほうが国民は幸せなのだ。耐えてくれ”自衛官の多くは、この言葉に声を詰まらせたといいます」(前同)

 この吉田元首相の孫にあたるのが、麻生太郎元首相(現・財務大臣)だ。「麻生さんは、裏表のない性格で地元でも愛されています。歯に衣着せぬ毒舌も持ち味で、口癖は“生まれは良いが、育ちは悪い”“いい若い者が、俺たちみたいな爺さんのような顔をしやがって、これじゃ日本の将来は暗い。明るい顔をしろ!”といったべらんめえ調のスピーチが得意で、よくも悪くも、口は悪いけど優しい“下町のおじさん”なんですよ(笑)」(同)

 吉田元首相の後、首相となった鳩山一郎氏は、吉田路線からの変革を目指していた。古参の自民党関係者が明かす。「鳩山先生は組閣後、側近を集め、“僕は多くの政策は君たちの言う通りにする。ただ、改憲とソ連との国交回復、この2点については僕についてきてほしい”と決意表明したといいます」

 政策は異なったものの、吉田、鳩山両元首相は、現在の自民党に続く派閥の二大源流になっている。「吉田派の流れを汲むのが宏池会(岸田派)、平成研(額賀派)、鳩山派のほうは清和研(細田派)がその系譜に連なります。虎は死して皮を残す……両者とも傑物だった証明でしょう」(前同)

 1956年の日ソ共同宣言でソ連との国交を回復後、内閣総辞職して政界を引退した鳩山元首相は、たすきを秘蔵っ子だった石橋湛山氏に託した。「鳩山首相引退後の総裁選の大本命は岸信介でした。そこで、2位の石橋は3位の石井光次郎と共同戦線を張ったのです。結果、見事、岸を破り首相の座を射止めていますが、これは石橋の参謀だった石田博英の存在が大きかった」(政治評論家の浅川博忠氏)

 石田氏の名は「博英=ひろひで」だが、その類いまれな博才から、周囲はそれを音読みし「バクエイ」と呼んだ。新聞記者から政治家になった石田氏は麻雀がめっぽう強く、「スエズ運河以東で一番」を自称していた。女性にもモテまくり、銀座では顔だったという。

 そんな男が惚れたのだから、石橋元首相の器量は相当なものだったのだろう。次に首相となった岸信介氏は戦後、A級戦犯に指定され、一時収監されていた人物(のちに不起訴)。「戦中の東條内閣で商工大臣を担当していた岸先生は、東條さん相手にも臆せず意見を述べたことで知られます。憲兵隊が大臣官舎に押しかけて、軍刀を突きつけられたこともありますが、“黙れ、兵隊! お前らみたいなのがいるから、最近東條さんの評判が悪いんだ!”と一喝し、追い返したというエピソードもあります」(前出の党関係者)

 豪胆で聞こえた岸元首相だが、悲願の改憲だけは成し遂げられなかった。「日米安保改定を実現しましたが、60年安保と呼ばれる反対派のデモは凄まじいもので、岸内閣は退陣を余儀なくされたのです。退陣を決意した岸は孫の晋三に対し、“憲法改正まで成し遂げたかったが、もう余力がない”と告げたといいます。その意味では、安倍首相は祖父の政治信条を純粋培養した宰相とも言えるでしょう」(前出の浅川氏)

 祖父のイメージも手伝ってか、とかく「タカ派」のレッテルがついて回る安倍晋三首相だが、実は細やかな気配りが得意だという。

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