また、前出の小関氏は、11月以降に新たな動きがあると注目している。「米大統領選でトランプ氏が当選した場合、トランプ氏は利害が一致すれば中国融和政策を取る可能性もあります。日米関係のスキに乗じて、中国がさらに尖閣に対して強硬路線を取る可能性は高いでしょう。領海侵犯の回数増や、場合によっては“民間漁船の監視・保護”という名目で沿岸警備隊を出動させることもありえます。これに対し、日本が強硬な態度を取れば、中国海軍が出動。一歩間違えば、軍事衝突寸前というリスクもあります」

 前出の井野氏も、軍事衝突は中国の想定内とみる。「中国側はすでに尖閣をはじめ、沖縄の各島を想定し、中国沿岸の島で演習を繰り返し、そのための部隊を編制、増強しているという情報もあります。同部隊の中核はゲリラ戦、対テロ戦などを実行する特殊部隊出身者で、中国側の精鋭です。米国側も中国との本格的な軍事的衝突は避けようと躊躇しますから、その間に尖閣上陸に進み、短期間でケリをつけるというのが中国の思惑です」

 その点、興味深いシミュレーションが今年1月、米国の著名なシンクタンク「ランド研究所」の上級アナリスト、デヴィッド・シラパク氏から出ている。「ケースバイケースですが、たった5日で日本側が敗北するというのです。1日目に、中国側の破壊工作で米国の証券取引所システムが止まり、米国側は軍事支援を中止。結果、5日目に中国が尖閣を確保。むろん、尖閣周辺だけの局地戦ですが、それにしても衝撃の内容です」(軍事評論家)

 この8月中に、防衛省は米軍とタッグを組み、“厳戒態勢”を敷いていたとの情報もある。「安倍首相がリオデジャネイロ五輪の閉会式で留守となる、8月21日を狙ったXデーがありえるというものです。漁民に化けた民兵が、体の具合が悪いとか、船が難破しかけたといった理由で、尖閣に緊急避難的に上陸。そして、そのまま居座るのです。それに先立ち、米太平洋軍がB52、B1、B2の3種類の爆撃機を太平洋地域に展開すると発表しました。これは異例で、“もし、21日に仕掛けたら空爆も辞さない”というメッセージだったとの見方が出ています」(全国紙政治部デスク)

 水面下では極めて状況は緊迫しているのだ。前出のデスクは、今回、安倍首相が稲田氏を防衛相に抜擢した理由も、こう分析する。

「これまでの国会答弁で、多くの閣僚が知識のお粗末さ、論理破綻をきたす中、彼女は弁護士でもあるからか、そういうことが一切ない。加えて、安倍首相に考えが近く、かつ、肝が据わっているため一番信頼されています。これも、Xデーないし、それに近い事態を想定してのことです」

  1. 1
  2. 2
  3. 3