そして、さらなる新世代の台頭も見逃せない。学生相撲出身の宇良(24)は昨年の3月場所が初土俵ながら破竹の進撃を続け、十両2場所目の先場所で11勝。2場所連続で二ケタ勝利を上げ、秋場所は東十両筆頭にまで昇進し、幕内入りが見えてきた。
中学までは相撲とレスリングをやっていた宇良はレスリングに由来する居反り、撞木(しゅもく)反りといった珍しい技を得意とする。「173センチと小柄なことから“技のデパート”といわれた舞の海になぞらえる向きもありますが、実は宇良は突き、押しにも力強さがある正統派。居反りにくると思わせて、しっかり前に出る相撲が取れるところが素晴らしいです」(やく氏)
ところで、この秋場所は7月31日にすい臓がんで亡くなった先代の九重親方(元横綱・千代の富士=享年61)の死後、初めての本場所となる。白鵬をはじめ多くの力士や親方衆が大横綱を偲んで追悼のコメントを発表したが、新入幕を果たした弟子の千代翔馬(25)も、心中期するものがあるに違いない。
「弟子に厳しかった先代の九重さんですが、モンゴル出身の千代翔馬には優しく接していましたね。千代翔馬は幕内最軽量の130キロ。そんなところも小兵ながら鋭い取り組みで“ウルフ”と呼ばれた先代を彷彿させるところがあります」(スポーツ紙記者)
その先代九重親方も、かつて秋場所では、ライバルとの名勝負を繰り広げている。83年、千代の富士(当時)はこの場所から新横綱となった隆の里と、千秋楽に全勝同士で優勝決定戦。隆の里が千代の富士を下し、双葉山以来45年ぶりとなる新横綱優勝を果たした。
「糖尿病を抱えながら30歳11か月で横綱に昇進した遅咲きで“おしん横綱”と呼ばれた隆の里ですが、千代の富士との対戦成績は通算16勝11敗という“ウルフキラー”。千代の富士の横綱昇進後で言うと11勝2敗と、圧倒しています。ちなみに、稀勢の里も今年で30歳。同じ年で横綱に昇進した入門時の師匠・隆の里にあやかって綱取りを決め、“(モンゴルの伝説の)蒼き狼の血を受け継ぐ”と自ら称する白鵬を破って“新ウルフキラー”といきたいところです」(前出の専門誌記者)