また、循環器の専門医でもある大阪樟蔭女子大学・健康栄養学部の石蔵文信教授は次のように話す。

「生物には心拍数の限度が定められていて、15億回から20億回といわれています。当然、ハードな運動で心拍数を使うと、理論上はその分、長生きできないことになります。また、タイムを競うなど、自分の体を顧みず、過度の負担をかけるのが一番よくありません」

 内臓や循環器だけでなく、準備不足のままジョギングをすることによって腰や足首、膝などの関節を痛めたという例も多い。「特に体重の重い人は、それだけ腰や関節への負担が重くなりますから、要注意です」(前同)

 その点、ウォーキングなら、ある程度は自分でペース調整が可能なのだから、我らオヤジ組としては、こちらを選ぶのが無難だろう。「欧米の研究データでは、最大心拍数の6~8割を上限にするのがベストであるという結果が出ています」と言うのは、新潟大学名誉教授(専門は予防医学)で現在、水野介護老人保健施設長を務める岡田正彦氏。具体的には、1分間の心拍数の上限を「165-年齢」とする考え方だ。50歳の人なら、1分間の心拍数が115に達しないよう心掛けて運動を行えば、体に負担をかけることは少ないのだという。

 安静時の心拍数は「1分間50~90」が正常値だというから、特殊な歩き方をしない限り、まず上限を越えることはない。とは言いつつも、“ただダラダラ歩かない”ことも重要だ。

「時速3キロのウォーキングより、時速5キロで歩くほうが健康にいいことが分かっています。つまり、ある程度は運動量が上がるほど効果も上がるということですね」(前出の岡田氏)

 よく「健康のためにエレベーターを使わず、階段で上り下りしましょう」と言われるが、岡田氏によると、階段を下りるのは時速5キロで歩くのと同じ、階段を上がると時速7キロで歩くのと同じくらいの運動量なのだという。

「よく“犬の散歩をしているから大丈夫”とか“ゴルフをしているから運動は足りてる”という人がいます。しかし、いずれも、それほど負荷の高い運動ではないため、運動効果は期待できません。健康法としては、あまりオススメできませんね」(前同)

 特にゴルフの場合、電動カートを使ってラウンドすると、ピアノを弾く程度の運動量しかないという。上限の範囲内で、ある程度、心拍数を上げないと運動効果は得られないのだ。「少し汗ばむ程度の運動量、というのがウォーキングの目安です。このウォーキングを30分、週に5回は行うのが理想です」(同)

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