たとえ主力選手がいなくなっても、すぐにそれを補って余りある若手選手が台頭してくるのが広島というチーム。今年ブレイクした選手でいえば、「神ってる男」鈴木誠也は、その典型と言えるだろう。他にも外野手の下水流昂(28)が一軍に定着したり、後半は怪我に泣いたが、投手の戸田隆矢(23)が前半戦に4勝を挙げたりと、頭角を現した選手が多い。

 そんな彼らの共通点といえば、ドラフト1位のエリート組ではないということ。鈴木は2位、下水流は4位、戸田は3位だ。「すでに主力となっている若手でも、田中は3位、11年の菊池は2位、丸は3位、なんと中﨑に至っては6位入団です。まさに“覚醒した雑草集団”ですね」(ベテラン記者)

 なぜ、これほどまでに無名だった選手が伸びてくるのか。その要因の一つは、なんと言ってもスカウトの眼力だろう。「特に、甲子園出場経験のない鈴木の2位指名は、かなりの冒険だったと思います。でも、広島の尾形佳紀スカウトは、鈴木が二松学舎高1年の頃から徹底マークしていたんです」(前同)

 今年の鈴木の活躍は、素材を見抜いて敢然と指名した広島スカウト陣の勝利と言えるだろう。かつて広島には、「スカウトの神様」と称された木庭教という名スカウトがいた。その伝統は脈々と受け継がれている。2013年のドラフト会議でドラ1のくじを引いたのは、監督や社長ではなく田村恵スカウト。これは広島が、いかにスカウトを大事にしているかを物語っている。ちなみに、ここで広島は大瀬良大地(25)の交渉権を得た。

 そして、広島で定評があるのが新人の育成。12球団随一といわれる猛練習を課し、じっくり育てていく。「そうした環境だからこそ、負けず嫌いの非エリートたちの闘争心が燃えるんです。“ドラ1より先に一軍に上がるんだ”ってね」(同)

 また、そうやって育ってきた選手の使い方にも、今の緒方監督は長けている。「これは、という選手が育ってきたら、とりあえず経験を積ませてきました。ベテランをたまに休ませるために、若手をスタメンで使ってみる。そうすることで若手の士気も上がるし、いい刺激をベテランに与えることもできます」(同)

 ベテランと若手を使い分けることにより、チーム全体を活性化させる。緒方采配は、実にうまい!

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