今、首都圏の球場でもスタンドが真っ赤に染まるという現象が起きている。カープファンが、いつの間にか大増殖しているのだ。もちろん優勝目前ともなれば、どの球団にも起きる現象ではあるが、広島の場合、優勝フィーバーによる一過性の現象ではなく、長年にわたる球団の営業努力の結果という側面が大きい。

 その典型例が「カープ女子」。カープフロントは積極的に女性ファンを開拓しようと考え、14年に女性ファン向けに新幹線を利用してマツダスタジアムまで野球観戦に行くツアーを企画した。これは球団が東京-広島の往復の新幹線代(約500万円)を負担するという太っ腹なツアー。当然赤字だったが、その様子は各種メディアで伝えられ、抜群の宣伝効果をもたらした。

「他にも、球場内にバーベキューコーナーを作ったり、空中回廊のような観覧席を作ったり、野球を見るだけではない、新しいファン層の開拓にも力を入れてきました」(スポーツ紙デスク)

 広島が参考にしたのは、メジャーリーグのベースボールパーク。野球への興味の有無にかかわらず、とにかくスタジアムに客を呼び込もうという発想だ。その一方で、グッズ販売にも力を入れた。鈴木が2試合連続サヨナラホームランを打てば、「2試合連続サヨナラホームランTシャツ」が即座に販売されるというフットワークの軽さが、ある。

 こうした企業努力の甲斐あって、今シーズンは収容人員3万3000人のマツダスタジアムは連日超満員。9月4日現在の有料入場者数は187万923人と活況を呈している。大型補強をする余裕のない「貧乏球団」というイメージが先行する広島だが、実は40年間にわたって黒字経営を続ける超優良企業。赤字経営に悩む他球団が広島のノウハウを学ぼうと、躍起になっているという現状もあるくらいだ。

 親会社を持たない球団であるがゆえに「親会社の赤字補塡」を当てにはできず、独立採算で、さまざまな工夫をしてビジネスにつなげなければならない。そこで、他球団では生まれないユニークなアイデアを次々と出し続ける。まさに「企画力」の勝利だ。

 こうした地道な努力が着実にファン層を拡大し、いつの間にか広島は、日本でも有数の人気球団へと変貌してきた。盟主を自認する老舗球団が、自らのブランド人気にあぐらをかいている間に、人気、実力の両面で、大きな差をつけられる日は、それほど遠くないかもしれない!?

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