加藤雅也「ハリウッドで学んだのは、“サバイブすることが大事”」生き残る人間力の画像
加藤雅也「ハリウッドで学んだのは、“サバイブすることが大事”」生き残る人間力の画像

 俳優って仕事は、自力で何かを切り開いていくって世界ではないんですよね。弁護士や医者のように試験にパスしたら、なれるわけでもないし、自分で“俺は俳優だ”って思ってもそれは俳優ではない。“あなたは俳優です”と他人に評価されて初めて、俳優になれるんです。

 だから、他力本願な部分が大きい仕事なんです。ただ、その他人の評価と、自分の能力が一致するかといえば、そんなこともないと思うんですよね。世の中の評価以上の実力があればいいんですが、それ以下の時は、不安でしょう。虚像の自分がいて、いつか、そのメッキが剥がれてしまうかもしれないわけですから。

 今回、映画『真田十勇士』で僕が演じている真田幸村も、自分の実像と、他人からの評価がかけ離れているという役柄。幸村は、天下の名将として名が轟いているけど、実は腰抜け武将だったという新たな解釈で描かれた作品です。

 僕自身にも幸村と重なる部分がありますね。モデルから俳優に転向したんですが、俳優デビューでいきなり主演だったんです。お客さんや、マスコミからしたら、“主演なんだから演技ができて当たり前”って目で見てくるわけですよ。できていない自分と世間のギャップが恐かった。

 映画『落陽』で、ハリウッド女優のダイアン・レインと共演したときも、今思えば、不安が大きかったですね。英語なんてしゃべれなかった。日常会話程度はできましたが、自分が思う英語がしゃべれるっていうのは、自分の信条や考えを、相手に伝えられることだと思っていたので、そこまでの英語力はなかった。

 でも、マスコミからは国際派俳優なんて言われて、記者会見になったら、プロデューサーが“マサの英語は完璧だ”なんて言うんですよ。そんなわけないだろうと。だから、必死でそのギャップを埋めようと努力するんですよ。できないのに、“いや、大丈夫っすよ”なんて言って、なんとか撮影の日までには、できるようにする。

 地位が人を作るって言葉がありますけど、そんな感じですよね。100%の準備ができたっていうタイミングで仕事がくればいいんですが、そうじゃないことのほうが多い。なので、7、8割自分のなかで、オッケーと思ったら、踏み込まないといけないと思うんです。

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