31歳で、海外の仕事をしたいと、ロサンゼルスに移住したときが、まさにそう。正直、7割の準備ができていたかはわかりませんが、向こうのエージェントから“こっちに来ない?”って言われて、こんなチャンスはないな、と。後でギャップは埋めればいいんだと渡米を決意した。

 いざ、アメリカに行くと、声をかけてくれたエージェントの会社が崩壊しちゃったんです。ヒマラヤ登っている最中に、ガイドが死んじゃったみたいな状況ですよ。なんとかして、そのギャップを埋めなくてはならないって思いはずっと頭の中にあって、英語を勉強し直して、演技力をつけるためにはどうすればいいのかって考えながら、オーディションを受ける毎日でしたね。

 そういったアメリカでの日々が役者としてのステップアップにもなったと思うんですが、何よりハリウッドで学んだのは、“サバイブすることが大事だ”ということ。つまり生き残らなくてはいけない。アカデミー賞を受賞した俳優でも、仕事のない人はいっぱいいる。でも、リチャード・ギアやトム・クルーズはアカデミー賞を獲ってないのに、いまだに一線で活躍している。過去に何をやったかは関係ない。次に何をやるかってことのほうが重要なんです。

 そのためにも、“この人の演技をまた見たいね”って、どうやったら思ってもらえるかを考え続けていかなければならない。自分で演技を続けたいと思っても、需要がなくなれば、サバイブすることはできませんから。可能な限り、演技の世界で、サバイブしていくこと。それが、僕の何よりの目標なんです。

撮影/弦巻 勝

加藤雅也 かとう・まさや
1963年4月27日、奈良県生まれ。大学在学中から、モデルとして活躍し、86年『メンズノンノ』では創刊号から活躍。88年、映画『マリリンに逢いたい』で俳優デビュー。同作で第12回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、数々の映画やドラマ、舞台に出演し、94年に渡米し、ハリウッドデビュー。現在も、様々な作品に出演し、第一線で活躍中。

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