8月30日、NHKは渋谷の放送センターを1700億円で建て替えることを発表した。20年の東京五輪後に着工し、完成は36年になるという。この建て替え計画は「そもそもの始まりからして、おかしい」と立花氏は指摘する。

「発端はNHKに金が余っていたことですよ。08年にNHKは受信料を10%値下げする方針を出したんですが、実際には“東日本大震災等の影響が大きい”といった理由から7%しか値下げしなかった。しかし結局、11年度は黒字で、その後も黒字が続いている。この点について、“これなら当初の予定通り10%下げられる”と国会で指摘されると、3400億円もの巨費を投じた放送センター建て替え計画を発表したんです。要するに、受信料を値下げしたくないがために出た計画で、合理的な理由はないに等しい」

 当初3400億円だった建設計画は、その後、1700億円と見積もり金額が半分になった。「これはもう子ども騙しですよ。1700億円は建物だけの費用で、ほぼ同額と思われる設備費は含まれない。結局、総額の3400億は変わっていません。新センターの完成は36年と20年先です。ネットが急速に進歩する現代において、はたして1700億円もかかる設備が必要でしょうか。動画配信がスマホ一台でできる時代ですよ。イギリスの公共放送であるBBCは自社設備の一部を売却し、必要に応じてレンタルするなどの合理的な経営をしています」

 この数年、NHKと、その関連会社には不祥事が相次いでいる。14年にはNHKビジネスクリエイトの女性営業部長が、不正経理で懲戒解雇されていたことが明らかになり、NHK出版の編集長が約900万円の架空発注で懲戒免職。15年6月にはNHKアイテックの担当部長が240万円のカラ出張で諭旨退職し、12月には同社の男性社員2人が架空発注で2億円を着服していたことが判明。

 今年に入っても負の連鎖は止まらない。1月に男性アナウンサーが危険ドラッグ所持で逮捕されたかと思うと、9月25日には53歳のNHK静岡の副局長が自転車泥棒で逮捕された。なぜ、ここまで連続するのか。立花氏は、12年前に「紅白歌合戦」などの番組で2億円近くの架空の制作費を詐取して詐欺罪に問われ、懲役5年の実刑判決を受けた元NHKチーフプロデューサーの事件が引き金では、と推測する。

「それ以前からも不正は続いていましたが、隠蔽されていたんです。私が職員だった当時も、タイムカードを押さず、締め日になってからの調整は日常でした。“月の残業代は50時間が限度。サービス残業をしている月もあるから、そうでない月は限度まで残業代をつける”という具合です。中には3泊4日の出張予定を2泊3日で切り上げ、“3泊4日で申請して何が悪いんですか”と真顔で聞く職員もいました。金銭に絡む事件・不祥事は、NHKの経理が甘いことと“ごまかしてもバレなきゃいい”という、法令順守の意識が希薄な体質があるということです。最も憂うべきは、不祥事に慣れてしまったこと。以前は不祥事があると、受信料徴収の際、“ご迷惑おかけしています。しっかり改善いたします”とお詫びしていました。しかし、現在は徴収を外部に委託し“放送法で決まっている”の一点張りで、不祥事を顧みてのお詫びはない。これはNHKが視聴者との信頼回復を考えず、“法律なんだから料金を払え”と言っているのと同じです。一から改善するという意識がなくなった、私はそう見ています」

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