東京五輪の本丸――森喜朗東京五輪組織委員会会長も“血祭り名簿”に載った一人。森氏と小池氏との確執は根深い。「2007年、森派に属する小池氏が防衛相時代、守屋武昌防衛事務次官(当時)を更迭した折、森氏が“守屋氏が切腹(辞任)しようとしたら、小池氏が後ろから刀で切りつけた”と批判したのが事の始まり。続けて、翌08年の自民党総裁選。森氏が麻生太郎氏を推す中、小池氏が出馬表明したところ、森氏は“了承していない”と激怒。対立が激化し、先の都知事選でも、森氏は最後まで小池氏の党公認を認めませんでした」(全国紙政治部記者)

 小池氏が都知事に就任すると、逆襲がスタートする。9月28日には都議会での所信表明演説で、きたる東京五輪に絡めて、「ハード面のレガシー(閉幕後も生きる“遺産”)だけではなく、ソフト面のレガシーを構築いたします」と発言。競技場の建設などインフラ整備(ハード面)のみならず、アスリートの就職支援、国際交流の地盤を作るなど、文化面(ソフト面)を重視すると言ったのだ。

「これは、かつて、森氏が新国立競技場の建設を“レガシーを残したい”と言った言葉を逆手に取って、喧嘩を吹っかけた形です。小池氏は“都民にどう有益か、選手にどう貢献できるか”という“都民ファースト”を強調したかったのでしょう」(前出の鈴木氏)

 加えて、小池氏率いる都政改革本部は、“五輪予算”にもメスを入れている。特に問題視したのが、13年の招致時から7.1倍の491億円にまで膨張した、ボート会場となる「海の森水上競技場」建設費。この代わりに、既存の宮城県登米市の「長沼ボート場」を利用する案を提出した。

「会議で、それを聞かされた森氏は、“IOC(国際オリンピック委員会)の理事会、総会で決まったことをひっくり返すのは極めて難しい”と言い、怒りに声を震わせていました」(前同) 前出の有馬氏は、「7倍以上に予算が膨らんだ『海の森水上競技場』は、“肥満五輪”の象徴。小池氏は、前五輪担当相の遠藤利明衆院議員から、なぜここまで経費が膨らんだのか、どう解決すべきか、などと話を聞き、落としどころを探しているといいます」

 一方の森氏は、7倍もの予算になったのには“それなりの理屈がある”と公言するが、自身が親密なゼネコンが五輪関係の工事を不自然に見えるほど多く受注していることなど泣きどころも多く、小池氏がここを突けば万事休すだ。

 続いて、5番目の天敵。新たに自民党東京都連会長に就任した、下村博文衆院議員だ。党の都議をまとめる立場にあるが、「小池氏が都議選がある来年7月までに新党を立ち上げ、そこへ、自民党の都議会議員が多く合流するという話も浮上しています。下村氏の責任問題になりかねません」(都議会中堅議員)

 しかし、一方で「新党を立ち上げる話はない。あくまでもポーズ」という声もある。前出の有馬氏が言う。「小池氏は、都知事を務めたあと、国政に復帰しようと考えています。現状、“ポスト安倍”の有力候補は石破茂前地方創生担当相ですが、“それはどうなのか”との声が党内にあるのです。彼女は、虎視眈々と自民党総裁のイスを狙っていると思います。自民党の党籍にこだわっているのも、それが理由でしょう」

 安倍首相の秘蔵っ子で、“日本初の女性総理大臣候補”とされる稲田朋美防衛相のクビも危ないと、もっぱら。スキだらけで、どえらい失態を犯したのだ。衆議院予算委員会で、民進党の辻元清美氏に、「稲田氏は、終戦記念日に行われた全国戦没者追悼式を欠席した。国の公式行事である“追悼式”を欠席した防衛相は稲田氏だけだ」と糾弾され、涙目で言葉に窮した姿を記憶する人も少なくないはず。小池氏は、この“防衛相失格”の烙印をさらにえぐる気なのだ。

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