『龍が如く』の産みの親であるゲームクリエイターの名越稔洋さんとの対談・後編です。ゲーム好きの私が一番ガッカリすること……それは発売延期。このことについて、イチゲームファンとして、名越さんに疑問をぶつけてみました。
名越:一応、『龍が如く』に限っては今まで一度も発売日を伸ばしたことがないんですよ。毎回、ギリギリで死にそうですけど(笑)。
ゆま:さすが。でも、他のゲームは発売延期になるものもありますよね。楽しみにしていたのに、発売予定が1年後とか平気で伸ばしてくるからガッカリ。
名越:アハハ、まあ延期してしまう理由も分かるんです。ゲームを作る人の“作り方”もさまざまで、作りながら考えるクリエイターさんも世の中にはけっこういるんです。僕は最初に設計図を全部決めてから作り始めるタイプなんですが。
ゆま:途中で、アレもしたい、コレもしたいってなっちゃうんですか?
名越:そうです。その結果、内容が良くなることもあるんですが、最悪、解決できない問題が生じて発売できない事態に陥ることもあるんです。特に我々の業界でいう“不具合”が取り切れないまま発売したら、大変なことになりますからね。
ゆま:お、恐ろしいですね。
名越:まあ、発売延期ってことは一生懸命、作ってくれているんだと思っていただければ(笑)。
ゆま:そうします……。ちなみにゲームと成人向けビデオはまた違うかもしれませんが、現場も監督さんによって違うんですよね。最初から最後まで設計を決めて撮影する監督さんもいれば、現場でいろいろとアイデアが浮かんで変更される監督さんもいるんですね。
名越:どっちがやりやすかったですか?
ゆま:一番やりやすいのは、あらかじめ完璧な設計を持ちつつ、現場で変更もできる監督さんでした。
名越:なるほど。確かに物事を決めてから進めるのは“安定感”があるんですね。ただ、作り出してから見えてくるものもあって、変更は仕方ないんですよね。大事なのは、その変更点を周りのスタッフにどう説明するかなんですね。
ゆま:変更されると、周りの人は困っちゃう?
名越:変更や追加をすれば面倒な作業も増えるし、みんなが100%の力を出してやっているときに、さらに20%の力を出せと押しつけるようなもの。だから、周りに納得してもらえるような説明をしないといけないと思うんですね。
ゆま:そっかぁ。そういう難しさもあるんですね。
名越:いまだに、変更したいことが出てきて周りに説明するときは、ドキドキしますよ(笑)。
ゆま:名越さんでもなんですね! 話は変わりますが、名越さんから見て今のゲーム業界はどう思いますか?
名越:10年前は想像もできなかったですよ。スマホでゲームをするなんて(笑)。
ゆま:ああ~。スマホの登場はやっぱり痛いですか?
名越:ちょっと難しい話ですが、僕らって、お金よりも一番欲しいのは“お客さんの時間”なんです。