その後、サッカー人気に押されて一時的に衰退した野球は、98年に彗星のごとく現れた松坂大輔というヒーローの活躍によって見事に復権。完全にブームの去ったゲーム業界でも、時を同じくして“絶対王者”ファミスタに取って代わる新勢力が台頭する。

 それこそが、先にも触れたコナミの『実況パワフルプロ野球』シリーズ。いわゆる“パワプロ”だ。「レトロゲームが好きな僕としては、そんなに思い入れはないですが、ファミコン時代に各社がしていた、いろんな試行錯誤を、うまい具合にアップデートさせた集大成がパワプロという感じはしますよね」

 タイトル通り、試合中の実況と、高低差が加えられた打撃が革新的であった。「試合の実況にしても、試合ごとに変わる選手のバイオリズムにしても、もとはと言えば、燃えプロシリーズがやろうとしていたことですし、パワプロでメジャーになったミートカーソルの概念も、『スーパーリアルベースボール』(バップ)あたりが88年の時点で、それに近いことをやっている。この『スーパー~』は、いちいちAボタンを押さないと選手が守備をしないという致命的な欠陥のあった“クソゲー”の一つではありますけど、近年では当たり前な全選手実名の先駆け的なソフトでもあります」

 件のパワプロシリーズに加え、リアル志向の『プロ野球スピリッツ』シリーズでも、野球ファンの心をガッツリつかむコナミの天下は、この先も揺らぐことはないだろう。だが、“一強”であるがゆえに、その殿様商売ぶりに対しては根強い批判の声があるのもまた事実。2代目“絶対王者”パワプロの牙城を崩すという意味でも、ファミコン時代のようなチャレンジングな野球ゲームの登場に期待したい。

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