過去には、こんなケースがあった。43歳の人妻で、ふだんはスーパーのレジ打ち係。地味かつ真面目な性格で、男と浮気をしている兆候はまったくなかった。

「そこで私がスーパーの客になって、奥さんに話しかけるようにしたんです。そのうち、“関西の方ですか? イントネーションで分かります。私も関西なんで”なんて言って近づいて行ったんです」(前同)

 もちろん、人妻の出身地から家庭環境、趣味も事前に調査済みだ。ゆえに、「関西のどこあたり?」と人妻が尋ねてくれば、ほぼ成功。由香里さんは奥さんの故郷の隣町あたりの地名を口にして、一気に親近感を高めていく。「私はサバサバした性格のせいか、年上の女性に好かれやすいんです。そんな私が“飲み会しましょうよ”と誘えば、ほぼ応じてくれますね。飲み会には、奥さんの好みの男性工作員を連れていきます」(前同)

 パート主婦も、飲み会では酒を飲みすぎたせいか、件の男性工作員にしなだれかかっていたという。「イチャついている姿を、ポーチに内蔵した隠しカメラでパチリ。これで浮気証拠の完成です」(前同) なんて恐ろしい……。

 一方、紗季さんは男性担当のトラップガールだ。「多いのは“彼と奥さんを離婚させて”という愛人女性からの依頼です」 離婚させるには、旦那の浮気バレが一番。しかし、自分は泥沼の離婚劇には巻き込まれたくない。そこで登場するのが、紗季さん演じる“二番目の愛人”。

「趣味が多い男性なら、出会う機会はたくさんあります。たとえば、スポーツジムやゴルフ練習場、お酒を飲む男性ならバーや居酒屋など。犬の散歩をする男性なら、私はレンタルペットの犬を連れて、近くの道を通ります」(紗季さん)

 一番困るのは、無趣味かつ、決まった行動パターンを取らない男性だという。「そういう場合、自転車のチェーンが外れて困っている女性を装います。ほとんどの男性は、女性に“チェーンが外れちゃって……”と頼られたら、放っておけないんですね」(前同)

 確かに。服装は、男性のタイプにもよるが、あくまで清楚な雰囲気を保ちながら、開いた胸元から谷間をチラ見せし、短いスカートから脚線美を露わにしてオンナを前面に押し出すという。そうやって接触に成功したら、「お礼をしたい」などと言って連絡先を交換する。

「デートに誘われたら、ホテルまでは行きます。でも、そこまで。私と男性が入っていく姿を別のスタッフが撮ったら、それで終わり」(前同) その手口もまた、手が込んでいる。

「私が入ると同時に、別の工作員がカップルのフリをして、後から入ってくるんです。で、“紗季ちゃん?”とカップルが私の名前を呼ぶ。つまり、知人と遭遇したことにするんです。そこで私は動揺したフリをして、男性に“ごめん、今日はちょっと”と言って逃げる」(前同)

 男性にしてみれば、あまりにも不幸な遭遇。しかし、本当の悲劇はこれからだ。「不倫相手が暴走したという形で、写真を奥さんに匿名で送ります」(前同)

 だが、こうした甘いワナに乗ってこない夫もいる。「そういうときは、友人として親しくなって、“今度、イヤな上司と飲みに行くことになったので、つきあってください”とお願いするんです。優しい男性ほど、そう言われると、放っておけないみたいで……」

 飲むのは個室居酒屋。最初は彼女と上司(工作員)と3人で飲むのだが、「俺、急用ができたから」と、上司が途中で姿を消す。すると、何も知らない人から見れば、個室で男女が2人きりで親密に飲んでいることになる。もう、お分かりだろう……。この光景を隠し撮りされ、奥さんに送付されてしまうのだ。

 紗季さんは、年間15件ほどの依頼を受けている。なかには、元カレがストーカー化し、その恐怖から逃れたい女性を守るため、元カレに近づき、男の興味を自分のほうに移させるといった危険な案件を担当することもあるという。だが、紗季さんがつけ回される危険性はないのだろうか?

「ストーカーは、逃げなければ大丈夫です。相手から逃げようとするから、追い回されるんですよ。逆に、こっちから連絡を取って追い回しておけば、ストーカーの心配もありません」

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