本来、遺伝子には細胞分裂があまり活発になりすぎないように調整している部分がある。ところが、何かのはずみでそこが傷つくと、細胞分裂のコントロールが効かなくなり、それが原因で“発がん”する。実はタバコには、この“コントロール破壊物質”が多く含まれているというのだ。ちなみに、タバコの発がんリスクは「量」と「時間」に比例して高まる、つまり、完全に禁煙しなくとも、タバコの本数を減らせば減らすだけ、発がんリスクは確実に減るのだ。

 また、タバコを吸わない人でも、気をつけていただきたいのが副流煙。他人の煙は、自分で喫煙する以上に発がん性が高いからだ。最近では禁煙と決められた場所が爆発的に増加しているが、たとえば、あなたの同居者が家でタバコを吸っているとして、その同居期間が25年であれば、喫煙していないあなたの肺がんリスクが2倍になるとのデータもある(同居者2人が喫煙していれば、肺がんリスクは2倍になる)。

 あまりに恐ろしいタバコの発がんリスクだが、これに肉薄するほど危険なのが、野菜の摂取不足なのだ。「野菜不足が原因で、食道がん、胃がんで発がんリスクが2倍、肺がん、大腸がんでは40%増えるというデータがあります」(同) 野菜不足による危険要因とみられるのが「フリーラジカル」という物質で、その代表が活性酸素。野菜には、この活性酸素を分解するビタミンEやポリフェノールといった抗酸化物質が豊富に含まれている。

「日本人は先進国の中で野菜不足が際立っています。簡単に済ませないといけないとしても、何か野菜の惣菜を1品加えて欲しい。野菜が無理なら、同じく抗酸化物質が豊富な果物でもいいです。特に、リンゴは抗酸化物質が飛び抜けて豊富。この物質は皮に豊富に含まれているので、剥かないで食べていただきたい」(医療ジャーナリスト)

 また、発がん対策という点から言えば、野菜は煮たり炒めるなど高熱を与えても抗酸化成分は分解されないという。山盛りのサラダである必要はないわけだ。もっとも、こうした指摘をすると、自分はサプリメント(健康食品)でビタミン類を摂っているから大丈夫という読者もいるかもしれないが、「大規模臨床試験で、サプリを用いることで発がん率が下がったというデータはありません」(前同)

 さらに意外とも思われるのが、外食をできるだけ減らすこと。手作り料理とは違って、過剰な塩分が使用されていることが原因だ。「塩は胃の粘膜にダメージを与え、がん細胞ができやすい環境を作りだします。世界的に、日本だけ胃がん患者が飛び抜けて多いのは、塩分の摂り過ぎという要因が大きい。米国の胃がん患者は、日本の4分の1に過ぎませんからね」(同)

 現在、日本人の1日当たりの塩分摂取量は約11グラムといわれる。これは、理想とされる8グラムよりもかなり多い。1杯に約6グラムの塩が入っているラーメンはおろか、醤油に味噌にソース、マヨネーズなど、身の回りは食塩だらけ。常日頃から、食塩への意識を持って生活していただきたい。

 仕事に追われ、運動習慣がない方も多いと思うが、これも改めてほしい。「運動不足は大腸がんのリスクを45%、肺がんを25%高めているというデータがあります」(前出の岡田氏) では、なんでも運動すればいいかと言えば、そういうものでもない。

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