西村「ただ、そのぶん、だいぶ遠回りはしていますよ。学校に通えば1日で教えてもらえることも僕の場合、1年以上かかる。でも、それはそれで良いのです。なぜなら現場ではトラブルがつきもの。そういうとき、僕には数々の“失敗経験”があるので、何通りもの対処法があるんです」

ゆま「格好いいです! 失敗を繰り返してきたからこそ、培えたものもあるんですね」

西村「まあ、自分が好きでやっている仕事なんでね。ところで、ゆまさんはどういう系のスプラッター映画が好きなの?」

ゆま「いろいろあるけど、やっぱりゾンビ系はなんでも好きですね」

西村「ほお。ゾンビのどういうところが好き?」

ゆま「なんでしょう……あの噛まれるときの痛そうな感じや、追い詰められる際の緊張がたまらない(笑)」

西村「そうですよね。でも、あれは欧米では、大笑いされるジャンルなんです」

ゆま「どういうことですか?」

西村「『死霊のはらわた』は知っていますか?」

ゆま「ビデオ屋さんでは片っ端から借りていますので、見たことあると思うのですが……」

西村「まあ、1981年公開の映画だから、ゆまさんはまだ生まれていませんよね。この映画は日本に上陸した初期のスプラッター映画で、かなり話題になったんです。“怖い”“気持ち悪い”と……。ところが、欧米では、観客が大爆笑するんです。血が派手に飛び散るシーンなんかも、普通の世界では絶対に起こらないことですよね。それが“面白い”と感じるんですね」

ゆま「へえ~。日本人の感覚とはまったく違うと」

西村「そうなんです。僕もそうした感覚に近い感じで作っているんです。この場面では、どんなふうに人体が真っ二つに切れると面白いのだろう、と」

ゆま「意外です! 見ている人にできるだけ恐怖を与えようとか、そういう感覚ではないんですね」

西村「はい。スプラッター映画やゾンビ映画の見方も少し変わりますよね」

ゆま「確かに(笑)。じゃあ、スプラッター映画の撮影現場も、実際は怖くないんですか?」

西村「怖いどころか、大忙しです。あっ、でも、一度だけ、撮影現場で心霊現象がありましてね……」

ゆま「ちょ、ちょっとやめてください(笑)。私、スプラッター映画は人間が作ったものだから、安心なんですが、リアルな幽霊は本当に怖いんです!」

西村「ふふふ。でも、せっかくなので、少しお話ししますね……」

※次週に続く

西村喜廣 にしむら・よしひろ
特殊メイクアップアーティスト、映画監督。幼少期から映画、特殊造型に強い興味を持ち、独学で技術を習得。園子温は学生時代からの映画仲間で、園作品でも多く特殊造型を担当する。最新作『蟲毒ミートボールマシン』は来年3月公開予定。

麻美ゆま あさみ・ゆま
1987年生まれ、群馬県出身。 2005年デビューし、ブレイクを果たす。セクシーユニット『恵比寿マスカッツ』のメンバーとしても活躍。現在はタレントとして活動。最新CD『Re Start~明日へ~』が発売中。

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