“大逆転男”との「ガチンコ勝負」で、まずは手痛い一撃を食らいそうな安倍政権だが、TPPより、むしろ重要なのは防衛・外交問題。ここからが、安倍首相の腕の見せどころだ。まずトランプ氏は選挙中、海外に駐留するアメリカ軍の撤退を訴えている。

 このため、防衛省関係者は、「日本が独力で中国などの脅威に備えるには、年間23兆円の国防費が必要と極秘裏に試算されている。現在の国防費は約5兆円。そんな金は出せない……」と危機感を募らせている。

 トランプ政権は、日本の安全保障にとって大きな痛手となりそうだが、「人員や武器配備が量的に変化するかもしれませんが、あっさり(駐留米軍が)撤退することはありません。日本国内の基地、特に沖縄は、米軍にとって最重要拠点ですからね」(前出のあえば氏) ただし、過酷なビジネスの世界で名を成したトランプ氏だけあって、“現状のまま”というわけにはいかないようだ。外交評論家の小関哲哉氏がこう続ける。

「トランプ氏は過去の経験や、しがらみが邪魔しないという点で、逆にそれが最大の強みになっています。TPP問題もそうですが、“それは、あくまで民主党政権時代の話。アメリカに利益になるのか、再検討しよう”という強弁を使って、自分のペースに持っていくことが考えられます。特に、日本を含むアジアの在外米軍問題では、その傾向が強くなるでしょう。民主党と違って共和党は、防衛予算の負担増を“駐留している国”に求める姿勢が強いからです」 今後、駐留費の日本負担増などを巡り、安倍首相とトランプ氏とのガチンコ対決が見られそうだ。

 続いて、12月にプーチン大統領が来日するロシアとの関係も気になるところ。特に北方領土のうち、歯舞・色丹両島の返還が噂される中、トランプ政権に横槍を入れられたら、積み上げてきた日ロ関係が一気に冷え込みかねない。

「1956年の日ソ共同宣言では、2島返還は合意に達していました。ところが、アメリカのダレス国務長官が日本を恫喝し、2島返還を断念させた経緯があります」(外務省関係者)

 ロシア経済分野協力担当相なるポストを新設し、子飼いの世耕弘成氏を就任させるほど対ロ外交に鼻息荒い安倍政権だけに、気が気ではないかもしれない。「それは杞憂でしょう。現在、ニューヨークの不動産にはロシア資本が流入していますから、トランプ氏は親ロシア外交を展開していくと思います。プーチンもそれを知っており、両者は相思相愛とも伝わります」(外信部記者)

“不動産王”と呼ばれ、実業家の顔も持つトランプ氏にとっては、ロシアは大事なビジネスパートナーのようだ。もう一つの懸案は、対中国政策だろう。

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