血栓や塞栓の治療薬「アスピリン」も、シニア層が注意すべきもの。少量の服用で血液の凝固を防ぎ、炎症を鎮める効果が期待できるが、胃潰瘍を引き起こしかねないそうだ。

 血栓や塞栓の別な治療薬「酢酸チクロピジン」も血液を固まりにくくするものなのだが、その影響で、脳出血や消化管出血など重い症状を起こす危険性を持っている。特に、服用始めの2か月間は警戒を強めたい。

 さらに、前立腺肥大で標準的な薬だという「塩酸プラゾシン」は、前立腺や尿道の筋肉を緩めて尿を出しやすくする。一方で、尿失禁を起こしてしまったり、過度の血圧低下が発生する可能性が否めないのだ。

 頻尿や尿失禁の治療に使われる「塩酸プロピベリン」はいくつか副作用があるが、特にシニア層が服用すると、一時的に認知症のような症状を発することがあるという。初めて服用する際は、家族に見守ってもらったほうがいいかもしれない。

 尿崩症や夜尿症の薬「酢酸デスモプレシン」は、効きすぎる場合に副作用が発生し、脳浮腫やけいれん、意識障害の恐れがある。

 咳がひどかったり、気管支炎になった際に出される薬に「コデイン」があるが、実は構造がモルヒネに類似した医薬品で、国際条約で規制されている。服用時に、その10%が体内でモルヒネに変化する恐れがある一方で、比較的、処方されやすい薬でもある。

 糖尿病薬の「ピオグリタゾン塩酸塩」は、インシュリンを細胞に取り込ませやすくし、血糖値を減らす効果があるのだが、服用期間が2年以上になると、膀胱がんの発症リスクを高めるとの報告がある。持病薬が、飲み続けることで毒に変化してしまう一例だろう。そのため、この薬の服用経験のある人が病院や薬局を変える際は絶対に、その服用歴を申告するべし。

「薬の服用をすぐにやめなさい、というのではなく、本当にそれが健康につながっているのか、いったい何のために飲んでいるのかという目線が大切なんです。大量に流れている医薬品のコマーシャルの裏にあるのは、痛みや不調を早く取り去ってあげたいという優しい思いだけでしょうか? ひょっとしたら、そうなのかもしれませんが、一方で、製薬メーカーが単に少しでも多く薬を売りたいだけかもしれません」(加藤院長)

 今回、紹介した書籍『薬に殺されないための必須知識』には、通常の医薬品だけでなく、漢方薬の危険性や、薬の飲み合わせ、さらに、適切な飲み方についても解説している。薬と上手につきあうためにも、ぜひお目通し願いたい。

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